研究課題
基盤研究(C)
自閉症や精神遅滞などの発達障害患者において、スパイン(後シナプス樹状突起棘)の形や密度の異常がみられる。自閉症の発症に関連する遺伝子産物(蛋白質)として、様々なスパイン形成に関わる蛋白質が報告されており、これらの遺伝子の変異によってスパイン形態異常が生じるこれらの事実は、スパイン形成に関与する蛋白質の異常が自閉症や精神遅滞などの発症要因となり得ることを示している。我々は、プロトカドヘリンarcadlin によるスパイン形態制御メカニズムを明らかにした。Arcadlin は、神経活動依存的にニューロンに発現誘導される。スパインに発現することにより、下流に存在するTAO2bキナーゼを介してp38 MAP キナーゼが活性化する。その結果、スパイン膜からN-cadherin を内在化させ、スパインを減らす。TAO2b遺伝子を含む16p11.2 領域の染色体微小欠失が自閉症発症と関連する。そこで、自閉症および正常対照より採取した遺伝子サンプルのTAO2bキナーゼに特異的な領域のうち(約900 base pair)に絞ってリシークエンスを行ったところ、複数のrare variant (TAO2#)を見出した。ラット海馬初代培養ニューロンにこれらのTAO2 変異体を発現させ、樹状突起スパインの形態変化を共焦点顕微鏡にて観察したところ、正常スパインに比べて長さは増大し、幅は減少した。また、密度が増加することが分かった。
2: おおむね順調に進展している
TAO2b遺伝子探索、および変異体による影響については確認できている。海馬初代培養を用いたTAO2b siRNAによるノックダウン実験に関しては、抗体染色による確認が行えていないが、TAO2bノックアウトマウスの作成に目途が立っている。
引き続き25年度の実験計画を進めていく。患者サンプルを用いた変異体の解析も引き続き行っていく。
培養用ガラスボトムディッシュの購入費に充てる予定である。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
Journal of affective disorders
巻: 147 ページ: 411-415
10.1016/j.jad.2012.10.014,
Translational psychiatry
巻: 2 ページ: e186
doi:10.1038/tp.2012.89