研究課題/領域番号 |
24500452
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
安田 新 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 研究員 (20392368)
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研究分担者 |
栃木 衛 帝京大学, 医学部, 准教授 (40456116)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 16p11.2 / 自閉症スペクトラム障害 / シナプス可塑性 |
研究実績の概要 |
自閉性スペクトラム障害(autism spectrum disorder: ASD)患者においてスパイン形態の異常がみられる。ASD患者に複数のスパイン形成に関わる遺伝子の変異が見つかっている。我々は、プロトカドヘリンarcadlinによるスパイン形態制御メカニズムを明らかにしたが、最近になって、ASD患者にarcadlinの細胞内領域に結合するTAO2bキナーゼをコードする染色体領域(16p11.2領域)の微小欠失が報告されたことから、arcadlin-TAO2bキナーゼシグナルの異常はASDの発症に関与する可能性がある。 そこで、TAO2bコーディング領域の新規変異の探索を行ったところ、自閉症患者のTAO2bキナーゼに複数の変異体がみつかった。 TAO2bノックアウトマウス海馬初代培養ニューロンの樹状突起スパインを観察したところスパインの幼若化などの形態異常がみられた。その形態異常はあるシナプス蛋白質のノックアウトマウスに観察される海馬樹状突起スパインの形態異常と類似していたので、この蛋白質の抗体を用いて、ノックアウトマウスの海馬初代培養ニューロンを染色した。その結果、野生型ニューロンに比べてシグナルが低下していた。そこで、ノックアウトマウスの初代培養ニューロンにこの蛋白質を強制発現したところ、スパイン形態が正常化した。また、この蛋白質とTAO2キナーゼの結合を野生型マウスの海馬組織を用いた免疫沈降実験により確認できた。これらの結果から、TAO2bキナーセとこのシナプス蛋白質の相互作用の障害により、スパイン形態異常が引き起こされることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度の結果を踏まえて、TAO2bノックアウトマウスにみられるスパイン形態異常のメカニズムを明らかにしつつあるが、成果を発表するためにはさらに追加実験を重ねる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は、TAO2bキナーゼノックアウトマウスにみられるスパイン形態異常や社会行動異常の病態メカニズムを明らかにするために、 TAO2bのターゲット蛋白質を同定した。27年度は、このターゲット蛋白質によるスパイン形態制御機構を更に詳細に明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
TAOK2ノックアウトマウスの培養実験および行動実験が計画的に進んだことから、海馬初代培養の為の実験器具、免疫細胞染色に係る抗体の費用、動物購入費用などの消耗品代を効率的に執行できた。また、国際学会へは、業務の都合により参加ができなかったことから、この経費についても未使用となっている。
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次年度使用額の使用計画 |
26年度は、TAOK2キナーゼを介する社会行動異常の病態メカニズムを明らかにするために、TAOK2のターゲット蛋白質を同定した。27年度は、さらに海馬初代培養ニューロンを用いた実験、diolistic法を用いたマウス神経細胞のラベリングなどを行い、学会で成果を発表する予定である。助成金は培養関係の消耗品代(30万円)、免疫細胞染色のための抗体購入費用(25万円)、学会参加費用(30万円)に充当する。
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