研究課題
自閉症発症とarcadlinの細胞内領域に結合するTAO2bキナーゼをコードする染色体領域(16p11.2領域)の微小欠失との関連が報告されている。そこで、自閉症および正常対照より採取した遺伝子サンプルのTAO2bキナーゼに特異的な領域のうち約900 base pairに絞ってリシークエンスを行い、複数のrare variantを見出した。自閉症患者で見つかったTAO2変異体(キナーゼドメインの変異体と調節ドメインの変異体)をニューロンに発現するとスパイン形成が抑制された。Arcadlinと TAO2の野生型と変異体を発現させたHEK293T細胞にarcadlin細胞外蛋白質を添加すると、野生型(wt)ではarcadlinが細胞内へ移行するのに対し、TAO2変異体を発現した細胞では、arcadlin-TAO2の内在化が抑制された。さらに、TAO2bキナーセノックアウトマウスを作成し、Diolistic法にて標識したニューロンの樹状突起スパインの観察を行ったところ、樹状突起スパイン形態に異常がみられた。また、正常ニューロンに比べて抑制性シナプスが増加していた。更に、ノックアウトマウス文脈的恐怖記憶にも異常がみられた。TAO2bノックアウトマウスに見られる樹状突起スパイン形態異常は、あるシナプス蛋白質のノックアウトマウスに見られる形態異常と類似していた。そこで、このシナプス蛋白質をTAO2bキナーゼノックアウトマウスの海馬初代培養ニューロンに強制発現したところ、スパイン形態や抑制性シナプス数は正常化した。今後は、TAO2bキナーゼやこのシナプス蛋白質の働きを抑制する薬剤をTAO2bキナーゼノックアウトマウスの初代培養ニューロンに投与し、スパイン形態異常や行動異常に対する効果を確かめる予定である。
すべて 2015 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)
Nature communications
巻: 6 ページ: 6842
doi:10.1038/ncomms7842
NeuroImage: Clinical
巻: 8 ページ: 455-461
doi:10.1016/j.nicl.2015.05.011
BioPsychoSocial medicine
巻: 9 ページ: 6
DOI: 10.1186/s13030-015-0035-3
http://www.igakuken.or.jp/plasticity/
http://researchmap.jp/saba_shibaru/