近年の越シナプス性トレーサーを用いた解剖学研究、脳機能画像研究、神経心理学研究などにより、小脳外側部が運動を伴わない高次脳機能に関与していることが示唆されている。本研究では、神経内科外来で脊髄小脳変性症患者に種々の心理物理検査を行い、高次機能障害を評価する検査法を開発するとともに、同様の課題をマカクサルに適用し、将来的に神経生理学・薬理学実験を組み合わせることで、そのメカニズムを探ろうと試みた。 最終年度にあたる平成26年度は、より高精度で視覚刺激を提示するためのシステムを開発するとともに、これまでに収集した純粋小脳型の脊髄小脳変性症(SCA6/31)と統制群からのデータを解析した。昨年度に続き、タイミング予測や行動選択に関した行動課題での成績と小脳容積または拡散強調画像でのFA値との相関を探索したところ、半月小葉を中心に有意な相関を認めた。さらに、類似の行動課題をサルに訓練して、行動解析を行った。その一部については、研究分担者が学会発表を行った。今後はこれらの研究成果を論文としてまとめる。また、上記の刺激提示システムを利用して小脳患者から新たなデータを収集するとともに、サルをモデルとした研究をさらに進めることを予定している。
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