研究課題
カルシウムシグナルはあらゆる細胞においてセカンドメッセンジャーとして機能し、細胞分裂、遺伝子発現、細胞移動、分泌、神経活動、筋収縮、細胞死など様々な細胞機能を制御している。本研究では昨年度までに光で細胞内カルシウムシグナルを制御できる遺伝学ツールBACCSを作製している。本年度はBACCSの応用および改良を行った。BACCSを用いてカルシウム依存的遺伝子発現誘導実験を行った。リポーターとしてまずNFAT応答配列の下流にYFPをつなげたコンストラクトを用いた。培養中、青色光を12時間照射したところYFPの発現を誘導することができた。さらにNFAT応答配列の下流にluciferase遺伝子をつなげたコンストラクトを用いて青色光6時間照射して発現誘導を定量したところコントロールと比較して発現量は24倍上昇した。このことからBACCSはカルシウム依存的な遺伝子発現誘導に応用できることが分かった。光を用いて活性を制御することの利点の一つに活性を時間・空間的に自由に制御できる点がある。しかしながらBACCSの活性はその作製に用いたオート麦由来の光感受性ドメインLOVの光サイクルに依存するため、活性の制御は分単位の時間を要する。そこでカルシウムシグナルの時間分解能を改善するために、BACCS内のLOV2ドメインに変異を導入して光サイクルの早いBACCS-fastと遅いBACCS-slowを作製した。HEK293Tを用いたカルシウムイメージング法及びパッチクランプ法により応答を観察することで、BACCS-fastでは光オフ後、速やかに反応が収束し、BACCS-slowでは持続的反応を示した。以上のようにBACCSのさらなる応用可能性、および変異による応答調節可能性を示すことができた。
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Journal of Neuroscience
巻: 34 ページ: 5121,5133
10.1523/JNEUROSCI.0186-14.2014.