研究課題/領域番号 |
24500458
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
平山 正昭 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30283435)
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研究分担者 |
中村 友彦 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (00437039)
渡辺 宏久 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (10378177)
祖父江 元 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20148315)
寳珠山 稔 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30270482)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / 脳磁図 / 一次視覚野 / 一次感覚野 / 加齢 / 前頭葉機能 / 認知機能 |
研究概要 |
脳磁図、MRIを用いて、パーキンソン病における痛覚異常や幻覚症状の解明のためにMEGを用いて視覚刺激による一次視覚野までの障害の程度(VEFを計測)を行った。また、MRIを用いて視覚野、感覚野への伝導路の形態的異常を測定した。パーキンソン病の運動障害の進行度は、UPDRS、認知機能はMMSE、FAB、MOCA-Jを用いている。また、近年認知機能と関連が強いにおい検査としてのOSIT-Jを行った。視覚の刺激提示は、視覚反応要素を単純化させるため、黒白のchecker flag模様と明暗だけの白黒刺激を行った。また、視覚刺激に関しては、半側視野刺激とし一次視覚野に出現する視覚誘発磁界を測定しやすくした。現在、まず加齢の影響を考えるために、若年者(20歳代)と高齢者(60歳代)について解析している。まだ、症例を集めている段階であるため十分な統計解析は行えないが、VEFでは、checker刺激で75msに出現する誘発磁界と120msに出現する誘発磁界が加齢に伴い軽度に延長した。しかし。各peakにみられる推定電流のには差がなかった。一方、no-checker刺激では、加齢による明らかな違いが見られなかった。MRIによる解析では、加齢による脳萎縮が観察されるが、現在までのところ誘発磁界の潜時延長と後頭部の萎縮とは相関は見られていない。さらに、高齢者内で認知に関連する要素と一次視覚野から側頭葉への伝導時間に逆相関が見られる可能性が認められている。これらが、今後症状との相関や治療による回復があるかを検討することで客観的な脳機能評価を行った病態解明につながると考えている。現在は検査数を増加させている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた脳磁図やMRIの非検者数は10例ずつを超えており、さらにパーキンソン病患者数もほぼ同数が行っている。予定していた視覚刺激による誘発脳磁図も、一次視覚野の領域で既に加齢の影響が観察されている。若干例のパーキンソン病とは、加齢に伴う変化以外の部位で違いが観察されてきており加齢に伴う変化と疾患に伴う変化区別できる可能性が考えられる。さらに、疾患の解析においても、検査方法に一部困難さがあるために認知機能の低下が軽微であり幻覚などの症状もないパーキンソン病患者を選んで測定しているにもかかわらずすでに、age matchした高齢者と有意な違いが見られ始めている。しかし、現在のところMRIによる脳の萎縮度はあまり高齢健常者と大きな違いがない。そのために、MEGの異常とは明らかな関連を見いだせていない。これは、現在早期患者を対象にしているためと考えられ、電気生理学検討はより早期の脳の異常を検出し得ると考える。今後これらのマーカーが、臨床症状とどのように関連づくかを観察することで病気に客観的バイオマーカーとして用いることができる可能性が考えられる。さらに現在は、視覚刺激に加え、二重電気刺激による感覚神経の刺激による一次感覚野の反応も観察しており、連続刺激による一次感覚野の抑制反応が加齢により低下するという興味ある結果を得ている。また、副次的産物として、酸化的ストレス物質の測定を行っていたが、ある種の治療によってはその上昇度が抑制されることが観察されている。したがって、ほぼ順調に研究が遂行されていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度行った加齢変化による視覚刺激による誘発脳磁図に加え、パーキンソン病患者での解析を行うため症例数の増加を行う。また、本年度購入したPCおよびソフトを用いてT1強調画像による脳萎縮の程度、diffusionMRIによるFAマップ、MDマップを作成しより微細な脳の機能変化を解析し誘発磁界の変化との関連を解析する。現在、視覚刺激による誘発脳磁図による成分がパーキンソン病患者の非運動症状と相関が見られてきているためより多数例での検討と非運動症状の更なる解析を行っていく。また、現在は刺激タスクが患者において十分行えるかを検討するため継承例でのみ行ってきたが、中等度の症例でも測定が可能であることが分かってきたためより重症な患者群も検討することで臨床症状の進行との関連も解析を行う予定である。 さらに、視覚刺激による誘発脳磁図のみでなく同時に二重電気刺激による感覚神経の刺激による一次感覚野の反応も途中から加えて観察している。これは連続刺激による一次感覚野の抑制反応が加齢により低下するという興味ある結果を得ている。また、パーキンソン病患者では、健常高齢者以上にその抑制の機構が破綻している傾向があり今後症例を増加させることで明らかになると考えている。また、この結果をふまえて脳磁図では施設による臨床応用が難しいことから、平素用いられる脳波計を用いて同様の現象を観察し得ないかを予定中である。 副次的産物として、患者より測定していた酸化的ストレス物質の変化が、薬剤の治療の違いによって抑制される可能性がみられた。これに関しては、さらに経時的に測定することで明らかになると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に、刺激装置やPCなどの大型予算は使用したため、次年度は主にMRI、MEGの使用料に当てられる。 MRI使用料 1時間 14,600円 MEG使用料 1時間 10,500円が必要である。次年度も30時間以上の使用を予定しているため予算の多くはこの部分で消費される。さらに、研究結果は、日本神経学会および17th International Congressで報告予定しておりその部分での旅費などが必要となる。消耗品として、尿中8-OHdGの測定料、においキットのOSIT-Jの購入費用などが次年度必要となる。
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