研究課題/領域番号 |
24500459
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
福井 巌 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90362532)
|
キーワード | 音源定位 / 両耳間時間差 / ニューロン |
研究概要 |
本研究の目標はニワトリ下丘において音源地図が形成されるメカニズムを解明する事である。音源地図とは音源の空間的位置に対応した脳内の特定の領域でその音の情報が処理され、音源の空間的位置が脳内の空間的広がりとして再構成される事である。聴覚は視覚とは異なり、左右の耳で捕えられた2点の音情報から音源の位置を計算する必要がある。その音源の位置の推定(音源定位)には両耳間の音圧差情報や時間差情報、音の周波数成分の比較などを手がかりに行われている。平成25年度の目標である「音圧差・時間差情報は音源地図形成にそのように関わるか」を明らかにする為に、多チャンネルで電極を用いて下丘からの記録を試みた結果、音圧差依存的に応答する領域や時間差依存的に応答する領域、さらには音源選択的に応答しない領域が観察された。 また昨年度までの研究により、両耳間の時間差を検出するとされている層状核の細胞において、左右の蝸牛神経核からの投射が周波数軸に対して非対称である事を示唆するデータが得られさらに詳細な検討を行った。その結果、層状核がうける左右の蝸牛神経核からの入力には特徴周波数の違いがあり、層状核で検出できる両耳間時間差の拡大している事が明らかになった。この結果は細胞外の集団的な電気応答でも確認で来た。さらに、計算機上でのシュミレーションを試みた結果、上オリーブ核からの投射の影響は時間差計算に於いてあまり影響を示さず、左右音圧差依存的に検出される最適時間差に変化が起こる事が確認された。2013年6月の日本神経科学学会(京都)で発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
下丘における細胞外からの記録は比較的簡単であるが、多チャンネルを用いた膨大なデーターで有る事と下丘内での応答パターンが複雑であるため、想定以上にデータの解析に時間がかかってしまっている。一方で層状核における記録は神経核が小さいために非常に困難であった。そのため、自動記録プログラムを作成し対応した。しかしそれでも記録及び解析に時間がかかっているが、計算機を用いたシュミレーションや細胞集団からの記録応答の解析により、今年度中に論文としてまとめられそうである。下丘の音源地図に形成に重要な左右時間差情報を検出する層状核において、研究が進んでいるものの、下丘における解析は当初の計画通りに進んでいないのでこの評価とする。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度の計画でまだ達成できていない部分を補完し、基本的に当初の実験計画通り進める。下丘においては時間差と音圧差にポイントを絞った解析を進めている。その後、下丘に色素を注入及び下位の神経核からの投射線維の可視化を進め、形態学的な解析を進める。また、下位の神経核に薬剤を局所的に投与し下丘での音源地図形成への影響を調べる。これと平行して層状核における時間差情報処理の詳細を自動化プログラムの完成させ、実験データの解析を詰める。さらに論文の作成・投稿を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初の実験計画よりも進捗状況が遅れており、機器や試薬などまだ購入に至っていない物が有る。しかしながら次年度は過年度分も含めて実験計画通り進める見込みであるため、次年度使用額として繰り越します。 基本的に実験計画書の通りに使用予定である。
|