本研究はニワトリ下丘での音源地図の詳細とその形成機序を探ることである。音源地図は音源の空間的位置、すなわち自分を中心とした音源の方向座標が脳内で再構成される事である。聴覚は視覚や触覚などとは異なり、感覚細胞そのものが空間的位置に対応していない為、左右の2点の耳で捕えられた音の情報から空間的位置の情報を抽出しなければ行けない。その音源定位に必要な情報には主に左右耳間の音圧差や時間差、片耳の周波数成分の分布などがある。平成25年度の目標は「音源情報統合の詳細を明らかにする」であるが、前年度までの計画において予測通り研究・解析が進んでいない部分があるのでその点をまず取り組んだ。 昨年度までの研究により下丘内において見つかった音圧依存的応答や時間差依存的応答の分布、及びそれらの音源選択的な情報に影響を受けない領域の詳細な同定を行った。音圧差や時間差以外も音源定位の手がかりとなる為、頭部伝達関数を測定する必要が生じた。また、左右の耳の時間差を興奮する細胞の位置情報へと変換している層状核の神経細胞に於いて、蝸牛神経核の細胞からの投射パターンが左右ので異なっている事を明らかにした。左右の特徴周波数差が層状核の神経細胞の位置に寄って異なっている事を神経細胞からの単一記録及び神経細胞群からの応答を様々な位置で記録する事により明らかになった。物理的な距離、すなわち時間の遅延を神経回路のシナプス接続パターンを変える事で実現している事を明らかにした。詳細な解析及び結果の整理、またシュミレーションでその意義の考察を行い、投稿準備中である。
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