研究課題/領域番号 |
24500460
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐藤 宏道 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50154092)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 初期視覚系 / 受容野 / 網膜神経節細胞 / 外側膝状体 / 一次視覚野 |
研究概要 |
麻酔・非動化したネコを実験対象として、網膜神経節細胞と外側膝状体ニューロン、外側膝状体ニューロンと一次視覚野ニューロンの単一ニューロン活動の同時記録を行い、受容野が重なり合うニューロンペアで活動相互相関解析を行った。これにより機能的結合関係が確認されたニューロンペアについて、2次元ホワイトノイズ刺激による受容野の時空間構造の可視化、刺激方位・空間周波数・サイズを可変としたサブスペース刺激による受容野特性の解析を行った。当該年度には特に網膜と外側膝状体間の機能的神経回路の解析を進め、以下の様な重要な結果を得た。 1)網膜神経節細胞、外側膝状体細胞ともに受容野は楕円形の構造であり、中心窩方向に 向いていた。2)受容野が重なり合い、ONまたはOFFの反応サインが共通のニューロンの間で同様の方位に選択性を示す例が多かった。3)反応サインが逆のニューロンペアでは、空間的に離れた位置に受容野が見られた。4)網膜神経節細胞の受容野の時間構造は外側膝状体細胞のそれと極めて強い相関を示したが、外側膝状体ニューロンの反応時間幅は網膜神経節細胞医のそれよりも有意に長かった。 これらの結果は、外側膝状体細胞が示す刺激方位選択的な応答特性が、網膜神経節細胞由来の楕円形の受容野構造を反映したものであり、外側膝状体レベルでの入力の収束によって、方位チューニングおよび空間周波数チューニングが先鋭化していることが示唆された。この成果は、従来の初期視覚系の受容野構造に関する理解を一新するものであり、極めて重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である、初期視覚系の受容野構造および受容野特性がどのように構築されているのか、を網膜神経節細胞ー視床外側膝状体間、外側膝状体ー一次視覚野間のニューロン活動同時記録法によって解析する試みは概ね順調に進んでいるといえる。今年度および来年度はデータの量を増やし、各ステージ間の神経結合の収束比および受容野のオン・オフ極性の関係を正確に推定することが次なる課題である。
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今後の研究の推進方策 |
麻酔・非動化したネコの網膜神経節細胞ー視床外側膝状体ー大脳皮質一次視覚野間で、同時刺入した記録電極を用いてニューロン活動の多チャンネル記録・解析を行う。これにより一次視覚野に至るまでの神経回路における合目的的受容野特性形成メカニズムを正確に解明する。この目的のためには、網膜神経節細胞活動の安定した記録が実験の重要なポイントになる。
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次年度の研究費の使用計画 |
ネコ用の脳底固定装置の改造、およびニューロン活動多チャンネル計測用の多チャンネル増幅器の購入に約1,400,000円の支出を予定している。それ以外は実験のランニングコストおよび動物の飼育費用に充当する。
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