研究課題
麻酔・非動化したネコを実験動物として、網膜神経節細胞と外側膝状体間、外側膝状体と大脳皮質一次視覚野間でニューロン活動を電気生理学的に同時記録し、活動相関と視覚応答特性を比較検討した。視野上で受容野が重なり合うニューロングループについて反応スパイクの相互相関解析、2次元ホワイトノイズ刺激による受容野の時空間構造の可視化、刺激方位、空間周波数、刺激位相に対するチューニングを比較した。H25年度は特に外側膝状体と一次視覚野の機能的結合の実態に関する解析を進めた。ニューロン活動はマルチユニット活動を対象とした。外側膝状体と一次視覚野の機能的結合を決める要因として、刺激方位に対するチューニングの類似性が上げられる。また、一次視覚野では、外側膝状体からの低空間周波数にチューニングした入力を、高空間周波数側にシフトさせるメカニズムが働いていることが示唆された。これらの結果はネコの網膜-視床-視覚野という初期視覚系において、視覚情報の性質を抽出するための受容野がどのように形成されているのかを定量的に解明するものであり、極めて重要な成果と言える。これらについては国内外の学会で公表すると共に、英文原著論文として国際専門誌に公表した。
2: おおむね順調に進展している
前年度までに網膜神経節細胞と外側膝状体間結合に関する結合の実態を解明し、25年度は外側膝状体と一次視覚野間の結合の実態に関するデータ収集と解析を行い、その概要を明らかにした。これで当初の目的は順調に達成されているといえる。26年度は不足しているデータの収集と解析を行い、定量的なデータに基づく初期視覚系の神経回路を作成する作業を完成させる。
以下の2点の研究を重点的に進める。1)ネコの網膜神経節細胞-外側膝状体細胞間で直接結合を示すニューロンペアのうち、受容野の応答サインが同じでありながら受容野が離れているものについて、これが刺激文脈依存的な受容野サイズの変化に寄与しているかを調べる。2)マカクザルで、網膜-外側膝状体-一次視覚野間の同時記録を行い、色覚情報処理回路を定量評価する。このために、サルの脳定位装置を眼球内電気生理実験用に改良する。
サル初期視覚系の色覚情報処理回路に関する電気生理学実験を行う予定だったが、脳定位固定装置の改良が予定通りに進まなかったため、これに必要な経費の執行が行われなかった。しかし、視床ー大脳皮質間結合の定量解析の研究は当初の予定以上に進んだ。サル眼球内電気生理実験用脳定位固定装置の製作費用、ヒトの絵画鑑賞と脳の活動解析に関する眼球運動モニターシステムのために研究費を支出する。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (9件) 備考 (1件)
European Journal of Neuroscience
巻: 40 ページ: 1-10
10.1111/ejn
巻: 37 ページ: 1270 - 1283
10.1111/ejn.12149
Scientific Reports
巻: 3 ページ: 1138 - 1144
10.1038/srep01138
PLoS ONE
巻: 8 ページ: e68430
10.1371/journal.pone.0068430
Neuroscience Research
巻: 77 ページ: 143 - 154
10.1016/j.neures.2013.08.009
http://www.vision.hss.osaka-u.ac.jp/index.files/current_papers.html