研究課題
最終年度には、私は、(1)内因性の鎮痛物質アセチルコリン(ACh)とオキシトシンの作用の類似性、(2)オキシトシン作用がバゾプレッシン受容体を介している可能性、(3)オキシトシン作用の雌雄差と生後発達、を検討した。実験はラット脊髄横断スライス標本の膠様質ニューロンにパッチクランプ法を適用して行った。(1)について、膠様質には様々な型のニューロンが存在しているので、同じニューロンでオキシトシンとニコチン型ACh受容体作動薬ニコチンあるいはムスカリン型ACh受容体作動薬カルバモイルコリンの作用を調べた。いずれの作動薬もオキシトシンと同様に膜を脱分極させた。(2)について、オキシトシンによる脱分極に対するバゾプレッシンV1A受容体阻害薬TMAの作用を調べた。TMAはその脱分極を抑制した。その受容体作動薬アルギニンバゾプレッシンは、オキシトシンと同様に脱分極を誘起したが、両者の脱分極の大きさの間に相関がなかった。その結果、TMAは非特異的にオキシトシン受容体を抑制したと推察した。(3)について、雌の成熟ラットでは、雄と同様、オキシトシンは膜の脱分極を誘起し、それらの大きさは雌雄間で有意差を示さなかった。また、生後14日目の幼若雄ラットでは、成熟雄ラットでは見られなかったオキシトシンによるグルタミン酸の自発放出の増加が見られる一方、成熟雄ラットと同様、自発性の抑制性シナプス伝達の促進が見られた。これらの結果により、研究期間全体を通じて明らかになったことは、成熟ラットでのオキシトシンの鎮痛作用機序は、バゾプレッシン受容体ではなくオキシトシン受容体の活性化→膜の脱分極→活動電位発生→抑制性シナプス伝達の促進、ということである。この機序は、雌雄いずれのラットでも見られる一方、生後発達を示す可能性も示された。オキシトシンと同様な鎮痛機序はAChによっても生じることが示唆された。
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