研究課題/領域番号 |
24500462
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
三嶋 竜弥 杏林大学, 医学部, 助教 (40317095)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シンタキシン1 / シナプス伝達 / 開口放出 |
研究概要 |
本研究では、主要な開口放出機構関連蛋白質であるシンタキシン1(STX1)のシナプス伝達における生理機能を解明することを目的としている。STX1には二種のアイソフォーム(STX1Aと1B)があるが、STX1Aの欠損では基本的なシナプス伝達機能に変化はみられない。そこでシナプス伝達機能において重要なのはSTX1Bであると仮定し、STX1B欠損マウスの神経表現型を解析する。 Ca2+非依存的なシナプス小胞の自発性放出に対するSTX1Bの機能を解析するために海馬初代分散培養系を用いて微小シナプス後電流の波形や頻度・振幅等を観察したところ、興奮性・抑制性の微小シナプス後電流の頻度が有意に低下していた。また、高浸透圧刺激を用いて即時放出可能なシナプス小胞のプールサイズを測定したところ有意に減少していた。次に、Ca2+依存的なシナプス小胞の誘発性放出に対するSTX1Bの機能を解析した。2つの神経細胞から同時にホールセル記録を行い、興奮性・抑制性の誘発性シナプス後電流を観察した。その結果、誘発性シナプス後電流の波形や振幅に変化はみられなかったが、ペアドパルス比の上昇、頻回刺激時のシナプス応答の減衰パターンに変化がみられた。 上記のようにSTX1A欠損マウスでは異常はみられなかったのに対し、STX1Bの欠損マウスのシナプス応答に複数の異常が見られたことから、STX1Bがシナプス伝達機能においてより重要なアイソフォームであると考えられる。特にSTX1B がCa2+非依存的なシナプス小胞の放出に強く機能している可能性が示された。一方、Ca2+依存的なシナプス小胞の放出には大きな変化がみられずSTX1Aとの機能差が少ないと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は当初の計画通り次の二点についてSTX1Bのシナプス伝達における機能解析を行った。(1)シナプス小胞のCa2+-independentな自発性放出に対するSTX1Bの機能解析。(2)シナプス小胞のCa2+-dependentな誘発性放出に対するSTX1Bの機能解析。 一部を除き必要とするデータを得ることができ、概ね想定通りの結果であった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降の研究計画として、次の二点を中心にシンタキシン1の機能解析を行う。(1)シナプス小胞のターンオーバーに対するSTX1Bの機能解析。(2)STX1AとSTX1Bのダブルノックアウトマウスのシナプス機能の解析。 (1)に関しては電気生理学的手法を用いてシナプス小胞のプールサイズを測定するほかにFM-dyeを用いたライブイメージング手法も用いる予定であり、実験系の確立にある程度(数ヶ月から一年程度)の時間が掛かるものと考えられる。これと平行して(2)のダブルノックアウトマウスの細胞培養系を確立する。予備的実験では、ダブルノックアウトマウスが胎生15日程度で死亡することが分かっている。また胎生13日目から採取した神経細胞を分散培養してもほぼ全滅してしまう。これはSTX1の欠損により神経伝達物質だけではなく、神経成長因子や接着因子の分泌や細胞膜のリサイクリングも阻害されることが原因である可能性が考えられる。そこで種々の栄養因子・接着因子等を添加したり、STX1以外のシンタキシンを強制発現させたりすることによって神経細胞の生存率が高まるような条件を検討する。安定した培養方法を確立した後、ダブルノックアウトマウスのシナプス機能の解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は予定していた実験が順調に進んだために実験動物や試薬の購入量が少なくすみ、次年度に使用する研究費が生じた。次年度以降は、特にダブルノックアウトマウスの神経細胞を安定して培養する方法を確立するのに費用がかかることが見込まれるため、こちらに使用する予定である。
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