研究課題/領域番号 |
24500464
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
籾山 俊彦 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (20230055)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ドーパミン / ノックアウトマウス / シナプス伝達 / D2受容体 / カルシウムチャネル / 刺激頻度依存性 |
研究概要 |
マウスを断頭し、マイクロスライサーを用いて線条体を含む厚さ300ミクロンの冠状断スライスを作成した。線条体のアセチルコリン性介在ニューロンからパッチクランプ用増幅器によりホールセル記録を行ない、ニューロン近傍に電気刺激を与えることによりシナプス後電流を誘発した。 申請者はこれまでにスライスパッチクランプ法を用いて、ラット線条体アセチルコリン性介在ニューロンから記録したGABA性抑制性シナプス後電流修飾におけるD2型ドーパミン受容体とN型カルシウムチャネルとの選択的共役およびその生後発達変化を明らかにした(Momiyama & Koga, J. Physiol., 2001; Momiyama, J. Physiol,2003)。D2型ドーパミン受容体は、D2、D3および D4のサブタイプがクローン化されているが、現在のところ薬理学的にこれらを厳密に区別できるリガンドは存在しない。サブタイプ同定の一つの有力な方法として、本年度本研究では、D2受容体ノックアウトマウスから上記シナプス電流を記録し、ノックアウトマウスにおけるカルシウムチャネルサブタイプの関与の変化を解析した結果、N型チャネルの関与が有意に減少していることを見出した。また、誘発されたシナプス電流の刺激頻度依存性をノックアウトマウスおよび野生型の間で比較することによって、シナプス伝達就職における内在性ドーパミンの生理的機能を明らかにした。にこれによって、伝達物質遊離を制御するドーパミン受容体と特定のカルシウムチャネルサブタイプとの生理的共役に対する知見が強固なものになると期待される。現在論文改変中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高精度の行動監視装置により、各サブタイプノックアウトマウスのすべての動きを記録、解析し、電気生理学的データとの関係を体系付けることによって、ドーパミン受容体サブタイプの運動調節機能に対する貢献度を算定する、という予定は、別の論文として投稿する予定で、現在実験の最終段階である。
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今後の研究の推進方策 |
申請者らのこれまでの解析により、L-PIPase欠損マウスにおいて以下の知見得ている(Sasaki et al., Nature,2010)。1) 運動異常 2) 線条体神経細胞死の亢進 3) NMDA受容体拮抗薬による運動異常の改善 4) PI(3,4)P2分解活性低下によるマウス脳へのPI(3,4)P2蓄積 5) 線条体投射ニューロン膜電位の異常。 今後はこれらの知見を発展させて、線条体神経活動異常のメカニズムを検討する目的で、L-PIPase欠損マウス等、いくつかの遺伝子改変マウスを用いて、以下の解析を行なう。 I) 線条体アセチルコリン性介在ニューロンへの興奮性シナプス伝達におけるNMDA受容体成分およびAMPA/kainate受容体成分の割合の解析 II)抑制性シナプス伝達に対するD2型受容体を介する抑制の変化およびN型カルシウムチャネルとD2型受容体との共役の変化の解析 III) ドーパミン受容体ノックアウトマウスで行なったのと同様な行動・運動量解析 平成24年度のドーパミン受容体ノックアウトマウスを用いた解析および今後の各種遺伝子改変マウスマウスを用いた解析によって、細胞表面受容体および細胞内情報伝達系によるシナプス伝達のダイナミックな修飾機構が明らかになることが期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
備品購入の予定はなく、実験動物、薬品類を中心とした消耗品類代に充当する。一部を成果発表のための国内学会出張旅費に充てる可能性もある。
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