研究課題/領域番号 |
24500466
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 駒沢女子大学 |
研究代表者 |
佐藤 勝重 駒沢女子大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80291342)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 光学的イメージング / 膜電位感受性色素 / 脳幹 / 機能発生 / 脱分極波 / 神経回路網形成 / embryo / 自発興奮 |
研究概要 |
脳幹は、生命活動に関わる多くの情報が直接入・出力し、処理・統合される重要な領域である。脳幹では、末梢からの情報の伝達回路と、脳幹に内在する自発興奮の伝達回路とが混在しており、これらは互いに影響をおよぼし合いながら機能的に形成・調節されていることが推察される。我々は、脳幹の機能的構築・形成過程を明らかにする目的で、膜電位の光学的イメージング法を発生期の中枢神経系に適用し、一時中継核や二次中継核を同定し、それらの機能形成過程を明らかにしてきた。一方その研究過程で、外来性入力や自発興奮活動によって、中枢神経系のほぼ全領域にわたって広範に伝播する脱分極波が誘発され、それに引き続き、Ca waveが引き起こされることを見いだした。本申請研究では光学的イメージング法を中心に、①脳幹神経回路網の形成の時空間的ダイナミズムの解明と、②脱分極波の神経回路網形成における役割の解明を進める。 平成24年度は、脳幹神経回路網の形成の時空間的ダイナミズムの解明を中心に研究を進めた。①脳神経刺激により誘発される応答領域の同定:脳神経を吸引電極で刺激し、脳幹内での応答領域をoptical sectioning法を用い三次元的に同定した。それぞれの応答領域が同定されたところで光学的シグナルの定量的マッピングを行い、各応答領域の機能的構築を明らかにした。感覚系の解析では、一次感覚核を同定したあと、二次・三次応答野の機能マッピングを行った。②応答領域の協関関係の時空間的解析:複数の脳神経を同時に刺激し、応答領域がどのように変化するか時空間的な解析を行った。刺激頻度や刺激強度、刺激のタイミングのずれなどにより、どのような違いが見られるかをダイナミックに解析した。③形態形成との比較:形態形成過程の追跡を行い、機能形成過程と比較して「形態形成マッピング」と「機能形成マッピング」の相違性と連関性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は、生理学的研究も解剖学的研究も計画通りに進んでいる。具体的には、①脳神経刺激により誘発される応答領域の同定、②応答領域の協関関係の時空間的解析、③形態形成との比較を計画通りに進めてきており、今後の計画も順調に進むものと考えられる。1つ問題があるのは、膜電位感受性色素の合成を依頼している企業が、業績不振から色素の合成が難しい状況になったことであるが、当面使用する色素は確保されている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、課題2:Depolarization waveの神経回路網形成における役割の解明を中心に研究を進める。 具体的には以下の通りである。①Depolarization / Ca waveの時空間発現パターンの解析:各発生段階におけるdepolarization waveおよびそれに続くCa waveのマッピングを行い、空間的発現パターンの解析、発現時期の部位ごとの時間的相違の解析を行う。②Depolarization / Ca waveの伝播メカニズムの解析: depolarization waveは、gap junction blockerあるいはNMDA receptor blockerによって完全に消失し、gap junctionとchemical synapseの双方が絡み合ったdual networkによって伝播する。そのほかにもいくつかの神経伝達物質がmodulatorとして働いていることが示唆されているが、関連する神経伝達物質についてさらに詳細な解析を行い、ニューロンネットワークの実体についてその全容を明らかにする。③Depolarization waveの基盤となる形態的特徴の抽出:depolarization waveの発現には、部位的な差があることが明らかにされた。そこで、これらの部位に対応する形態学的基盤が何かを検討する。④Depolarization waveの発現に関与する分子メカニズムの解明:免疫染色によりdepolarization waveとconnexin subtypeの発現との関連を調べ、さらにelectroporationを用いたin ovo/utero gene expressionによりconnexinの発現時期を変化させて、depolarization waveの発現パターンがどのように変化するのかを調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は主に、実験動物、薬品類等消耗品の購入、国内外学会発表、論文別刷代に用いる予定である。本研究には膜電位感受性色素が必要不可欠であるが、膜電位感受性色素の合成を依頼している企業が、業績不振から色素の合成が難しい状況になっている。当面使用する色素は確保されているものの、今後のことも考え、当該企業には色素の合成の可否を再度問い合わせるとともに、新しい合成依頼先を開拓する必要がある。
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