研究課題
脳幹は、生命活動に関わる多くの情報が直接入・出力し、処理・統合される重要な領域である。脳幹では、末梢からの情報の伝達回路と、脳幹に内在する自発興奮の伝達回路とが混在しており、これらは互いに影響をおよぼし合いながら機能的に形成・調節されていることが推察される。我々は、脳幹の機能的構築・形成過程を明らかにする目的で、膜電位の光学的イメージング法を発生期の中枢神経系に適用し、一時中継核や二次中継核を同定し、それらの機能形成過程を明らかにしてきた。一方その研究過程で、外来性入力や自発興奮活動によって、中枢神経系のほぼ全領域にわたって広範に伝播する脱分極波が誘発され、それに引き続き、Ca waveが引き起こされることを見いだした。本申請研究では光学的イメージング法を中心に、①脳幹神経回路網の形成の時空間的ダイナミズムの解明と、②脱分極波の神経回路網形成における役割の解明を進める。平成25年度は、以下の通り研究を進めた。①Depolarization / Ca waveの時空間発現パターンの解析:各発生段階におけるdepolarization waveおよびそれに続くCa waveのマッピングを行い、空間的発現パターンの解析、発現時期の部位ごとの時間的相違の解析を行った。②Depolarization / Ca waveの伝播メカニズムの解析: depolarization waveは、gap junction blockerあるいはNMDA receptor blockerによって完全に消失し、gap junctionとchemical synapseの双方が絡み合ったdual networkによって伝播する。そのほかにもいくつかの神経伝達物質がmodulatorとして働いていることが示唆されていたが、関連する神経伝達物質についてさらに詳細な解析を行った。
2: おおむね順調に進展している
研究は、生理学的研究も解剖学的研究も計画通りに進んでいる。具体的には、①脳神経刺激により誘発される応答領域の同定、②応答領域の協関関係の時空間的解析、③形態形成との比較を計画通りに進めてきており、今後の計画も順調に進むものと考えられる。1つ問題があるのは、膜電位感受性色素の合成を依頼している企業が、業績不振から色素の合成が難しい状況になったことであるが、当面使用する色素は確保されている。今後、合成を依頼でいる新しい業者の開拓が必要である。
平成26年度は、以下の通り研究を進める。⑤自発興奮波の時空間パターンとペースメーカー部位の同定:Depolarization waveは自発的にもおこることを見出したが、この自発興奮波の機能的意義を明らかにするために、その発生のoriginを同定する。⑥自発興奮波の伝播メカニズムの解析:自発興奮波の広がりは、我々がこれまでに解析を行ってきた非自発性(刺激誘発性)のdepolarization waveとよく似ているが、同一のネットワークを介しているのかは未だ不明である。そこで、全脳―脊髄標本に、様々な神経伝達物質ならびにgap junctionのblockerを投与して、自発興奮波がどのように阻害されるのかを調べ、伝播ネットワークのメカニズムについて解析を行う。⑦自発興奮波の発生過程における役割についての解明:⑥の結果をもとに、自発興奮波の発生あるいは伝播を阻害するblockerを同定し、それらのblockerを、自発興奮波の発現開始期に初期胚神経管内に投与して、自発興奮波の阻害によってどのような機能的・形態的異常が生じるのかを調べる。生じた変化から、発生過程における自発興奮波の機能的役割を解明する。
英文論文別刷代およびカラー図代が必要だったが、残額では大幅に不足していたため。次年度の研究費と合わせて、英文論文別刷代およびカラー図代に当てる。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) 備考 (1件)
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