研究課題
大脳基底核は運動制御と行動遂行に加え、行動の修正をもたらす「注意」にも関わるとされる。感覚情報を運ぶ視床線条体入力が「注意」を促し、状況に合わせた行動修正に働くと考えられる。線条体では投射ニューロンとともに内在性コリン作動性介在ニューロンが視床入力を受けている。コリン作動性ニューロンは、線条体の2-3%の数に過ぎないことを考えると、視床からかなりの入力を受けているといえる。我々は視床線条体スライスを作製してwhole-cell patch-clamp記録を行い、コリン作動性ニューロンが興奮性の視床線条体入力を受けて興奮することを確認した。興味深いことに、コリン作動性ニューロンの興奮は、自分自身に再帰性のGABA性入力をもたらし、それによって発火が抑制された。この再帰性GABA性入力にはニコチン性受容体の活性化が必要であり、さらに線条体のコンパートメント構造(ストリオソーム/マトリックス)によって異なることを見いだした。すなわち、ニコチン受容体依存性の再帰性GABA性入力はマトリックスに有意に多くみられた。これとは逆に、μオピオイド受容体によるGAB性入力の阻害はストリオソームに特異的にみられ、M1ムスカリニック受容体の活性化によって拮抗された。こうした局所神経回路は、コリン作動性ニューロンに特徴的な一過性の興奮-抑制という活動パターンを発生する機構の一つである。ドーパミンと共にアセチルコリンは大脳基底核の機能に必須であり、それらが感覚情報に合わせて増減することが強化学習や行動修正に重要と考えられる。本研究では、これまで線条体では一様と考えられてきたアセチルコリンの作用が、GABA性入力に対して、コンパートメント間で異なることを明らかにした。行動の修正をもたらす「注意」においても、線条体のコンパートメントによって異なる機構を持つことが示唆された。
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