研究課題/領域番号 |
24500469
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
増田 章男 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10343203)
|
キーワード | 神経筋接合部 / レーザーマイクロダイセクション / スプライシング / RNA-seq |
研究概要 |
前年度までの研究により、レーザーマイクロダイセクション法により神経筋接合部のtotalRNAを抽出することにより成功した。このRNAは平均10ngと極めて微量で、通常の方法では、網羅的発現解析が行うことが出来ない。このため、当該年度は、微量RNAからの網羅的解析法の検討を行った。 RNA増幅によるmicroarray解析と、微量RNA-seq解析の2法について検討した。microarrayでは、Ovation RNA amplification kitを用いて、RNA増幅を行った後、exonarray解析を行った。発現解析では、神経筋接合部特異的に有意に発現変化する1598個 (up1260/down338)の遺伝子を同定した。既報の10倍以上の数の遺伝子変化をとらえることに成功した。さらに、exonレベルでの発現変化を解析したところ、163個のexonで神経筋接合部特異的な発現変化が認められた。当初の推測通り、神経筋接合部特異的なスプライシング機構の存在が明らかとなった。 RNA増幅に伴うdataの偏りを無くすため、RNA-seqでは増幅なしの、微量RNA解析に挑戦した。通常1ug程度のRNAが必要であるが、100, 10, 1ngのcontrol RNAでRNA-seq解析に挑戦した。RNA-seqの各ステップの改良により、read数の減少は見られるものの、1ngのRNAでもRNA-seqの解析が可能となった。この方法を用いて、神経筋接合部領域の微量RNA-seqを行ったところ、発現解析はexonarray解析と同様の傾向を示した。exonレベルの解析では、exonarrayで検出された変化に加えRNA-seqでのみ同定できた、スプライシング変化が多数検出された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度までの研究で、予定していたexonarray解析に加え、RNA-seq解析にも成功した。期待通りの結果が得られており、神経筋接合部では、今まで想像されていた数を遥かに超える多数の遺伝子発現変化とともにスプライシング変化があることが判明した。スプライシング変化については、CamKファミリー分子のスプライシング変化が顕著に認められ、神経筋接合部では、細胞内Caシグナルが変化していることが予想される。現在、この独特のRNA代謝のカギとなる分子を探索しており、その一部は、機能未解明なRNA結合蛋白であるRBMSファミリー分子であることを同定している。研究は、順調に発展中である。
|
今後の研究の推進方策 |
網羅的解析の結果、神経筋接合部では、Caシグナル伝達に関わる細胞内因子のスプライシング変化が、多数認められることが明らかとなった。今後、これらのスプライシング変化が、どのようにシグナル伝達に影響を及ぼすか、western blottingによる、リン酸化解析を行って、明らかにしていく予定である。 また、神経筋接合部で特異的に発現変化が見られるスプライシング因子として、RBMSファミリー蛋白を同定している。これらが、どのように神経筋接合部のスプライシングを調節しているか、ノックダウン、強制発現、minigene analysis, CLIP-experimentなどを行い、解析していく。 エクソンアレイ解析の結果では、スプライシング変化に加え、転写終結点の変化も同定されている。これらの詳細を、次世代シークエンサーを利用したpolyA-Aseqにより、明らかにしていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
レーザーマイクロダイセクション法による神経筋接合部特異的RNAの回収では、予想より極めて微量のRNAしか得られず、一般的な解析に必要な品質のRNAを回収することが出来なかった。改善のため、レーザーマイクロダイセクション法を10回以上、施行することとなり、数か月の日数を要した。この結果、エクソンアレイ解析および次世代シークエンス解析のために確保していた予算の使用に遅滞が生じた。エクソンアレイ解析、RNA-seq解析は年度内に施行されたが、さらなるRNA代謝の詳細解析のための、CLIP-seq解析、polyA-seq解析が、年度内に施行できなかった。 次年度中に、CLIP-seq、polyA-seqなどの次世代シークエンサー解析を行う予定である。
|