研究課題
前年度までの研究で、レーザーマイクロダイセクション法で採取した神経筋接合部(NMJ)特異的な微量RNAのExonarrayおよびRNA-seqに成功している。昨年度は、そのBioinformatics解析から、NMJ特異的に発現するRNA結合タンパクとして、RBMSファミリータンパクおよびMBNLファミリータンパクを同定した。RBMSファミリータンパクは、現在まで、ほとんど解析のなされていない機能未解明な分子であり、何らかの新発見につながることが期待される。MBNLファミリータンパクは、筋分化に関わる分子として広く知られているが、NMJ形成への関与については、断片的な知見しか得られていない。RT-PCR法、免疫染色法により、これら分子が神経筋接合部に高発現していることを確認した。さらに、マウス筋芽細胞株C2C12にAgrin刺激を加え、疑似的にNMJ形成を促したところ、期待通り、RBMSファミリータンパクとMBNLファミリータンパクの発現が上昇することを、RT-PCR法およびWestern blotting法で確認した。続いてRBMSファミリータンパクとMBNLファミリータンパクのsiRNAによるノックダウンの条件検討を行った。それぞれ、数個のsiRNA配列を試用し、少なくとも2個の配列でC2C12細胞における高効率なノックダウンを誘導できることを見出した。これらsiRNAによるMBNLノックダウンにより、C2C12細胞において既知の標的exonの選択的スプライシングが、変化することを見出した。
3: やや遅れている
予定していたExonarray解析、RNA-seq解析に成功し、網羅的解析からNMJ特異的な発現を示すRNA結合タンパクとして、RBMSファミリーおよびMBNLファミリータンパクを見出した。昨年度は、これらの機能解析に取り組み、これらがNMJ特異的に発現していることを免疫染色やRT-PCR法により確認した。さらに、これらタンパクのNMJ形成における機能解明に取り組んでいる。RBMSファミリータンパクについては、既存の研究が行われていない分子であり、抗体、発現ベクター、ノックダウンの条件検討など、実験の基礎的段階の準備に通常より時間が必要であった。MBNLファミリータンパクについては、既存の研究結果と異なる発見であり、本当にNMJ特異的な発現があるのか、様々な実験を行って検証する必要があり、確認に時間が必要であった。このため、予定より達成度は、遅れる結果となった。
RBMSファミリーおよびMBNLファミリー分子のNMJ形成における機能解析に取り組む。筋芽細胞株C2C12でAgrin刺激依存的に、これら分子の発現が上昇することが確認されており、この細胞株を用いたノックダウン、強制発現実験により、これら分子の機能を解明する。RT-PCR,Western blottingによる個別遺伝子の解析に加え、CLIP-seq、RNA-seqなどの網羅的解析を行い、これら分子のNMJ形成における役割を総合的に解明する。
NMJ特異的な発現を示すRNA結合タンパクについて、その機能解析を行うため、細胞実験系において、RNA-seqを含めた網羅的解析を行う予定であった。しかし、ノックダウンや過剰発現の条件検討に、予想以上の時間が必要であったため、機能解析を年度内に行うことが十分にできなかった。
次年度中に、RBMSファミリーおよびMBNLファミリータンパクについて、RNA-seq解析、RT-PCR解析、CLIP-seq解析などを行い、その機能解明に取り組む。解析に必要な生化学試薬類・プラスチック器具類の購入に充てる。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
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