研究課題
骨格筋小胞体は細胞内Ca2+ストアとして重要な役割を果たしている。骨格筋では細胞膜が内部に管入した横管が発達しており、その両側に小胞体が近接した三つ組構造を形成する。三つ組構造はカルシウムシグナル伝達機構にとって非常に重要であり、その分子構築を解明することは骨格筋にとどまらず、細胞学的に大きな意味を持つ。我々はこれまでにいくつかの三つ組構造に特異的に発現する蛋白質を精製、その遺伝子クローニングを成功させ、成果を発表してきた。本研究課題のMG56は筋小胞体の三つ組構造の小胞体に発現する膜たんぱく質である。MG56蛋白質は、膜に存在する脂肪酸転移酵素、MBOAT(membrane-bound O-acyl transferase)ファミリーであるため、何らかの酵素活性を持っていることが期待される。また、ノックアウトマウスを樹立した。MG56ノックアウトマウスは、生後1週間までは異常がみられないが、以後発育が遅れだし、生後2週間以内に全てのマウスが死亡する。生後1週間という時期は、筋肉が成熟を始める時期で、この頃より、リアノジン受容体、電位依存性Caチャネルなど、筋組織で重要な役割を果たす蛋白質の発現が増加してくる。この筋組織成熟の機構にかかわっているものとして、MG56がこれら蛋白質へ脂肪酸付加といった翻訳後修飾をしているのではないか、との仮説をたて検証を試みている。
2: おおむね順調に進展している
本年度は新たに以下の進展があった。1.ジーンチップ解析やその後のリアルタイムPCR, タンパク質解析により、MG56ノックアウトマウスの骨格筋細胞ではERストレスが重篤に起こっていることがわかった。しかしながらMG56の発現が2番目に高い心臓では軽度であった。2.コムギ無細胞系でのMG56合成により、高純度のMG56を得ることができた。
1.上述のように、高純度のMG56をコムギ無細胞系により合成することができたので、筋組織の主要蛋白質も合成して、MG56の脂肪酸付加の酵素活性能を検討する。まず第一にリアニジン受容体への修飾の有無を検討する。2.ERストレスを惹起するものとして、MG56欠損にによる特異的蛋白質への修飾不良が考えられる。修飾されずに不良な蛋白質として処理されたのであれば、そのタンパク質は減少しているはずである。ノックアウトマウス骨格筋の三つ組構造部分を密度勾配法により濃縮して減少している蛋白質がないかを検討する。
共同研究打ち合わせにて、無細胞系での組み換え蛋白質合成、それを用いての酵素活性検討を今後の大きな研究計画とした。そのための準備に今年度は終わってしまったが、次年度にさまざまな条件で挑戦する予定である。組み換え蛋白質合成のための試薬代や、RI標識の脂質の購入のために使用する。どちらも高価な試薬であるため、今年度を切り詰めて繰り越した。
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Pflugers Arch
巻: 465 ページ: 1135-1148
10.1007/s00424-013-1251-y.