研究課題
筋ジストロフィーニワトリの責任タンパク質として報告されたR441Q変異型WWP1を発現させたトランスジェニック(Tg)マウスの解析から、我々はこのミスセンス変異によるアミノ酸置換がWWP1の分解を誘導し、130 kDaのWWP1から約90 kDaの酵素機能を失った小断片(sWWP1)となること、また、このsWWP1が筋形質膜特異的に局在するようになることを明らかにした。しかしながらこの変異型WWP1の発現が原因とされる筋ジストロフィーニワトリに比べ、Tgマウスの筋症状は軽微であるため、筋再生を誘導しその修復過程に何らかの差異が認められないかを病理学的に解析したが、下肢筋へのカルジオトキシン投与においても、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのモデルマウスであるmdxマウスとの交配においても、変異型WWP1分子の発現群と対照群との間に著しい差異は認められなかった。筋ジストロフィーニワトリの筋肉を使ってWWP1分子の発現を詳細に解析したところ、R441Qのアミノ酸置換が骨格筋特異的なWWP1の分解を誘導しており、Tgマウスがこれを再現していることを確認したが、一方で変異型分子のほとんどは形質膜から消失し、筋小胞体やミトコンドリアへ分布するというTgマウスとは異なる局在であることが示された。さらに、筋ジストロフィーニワトリにおいても筋変性が認められない前広背筋(ALD)について調べたところ、正常のニワトリであってもALDではWWP1が筋形質膜には認められず、発現そのものが著しく低いことが明らかになった。このことは、白筋や赤筋といった筋肉の種類によって筋細胞に果たすWWP1の機能が異なることを示唆していた。また、筋ジストロフィーニワトリの遺伝形式は共優性(codominant)であるが、本解析はホモ接合体を用いて行われた。Tgマウスでは正常と変異型のWWP1が共発現しており、両者の発現バランスが筋ジストロフィーニワトリとは異なり、筋症状に影響を与えている可能性が考えられた。
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