研究課題/領域番号 |
24500476
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
道川 貴章 独立行政法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 研究員 (90282516)
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
アデノウイルス注入法によりプルキンエ細胞特異的に蛍光カルシウムセンサータンパク質を発現させたマウスを用いて二光子励起レーザー顕微鏡によるin vivoカルシウムイメージングを行うことで、登上線維入力によりプルキンエ細胞で生じる1回の複雑スパイクの発生をリアルタイムで計測可能であることを明らかにしてきた。独自に開発したこの実験系を用いて、オペラント条件付けに伴う運動学習獲得過程に関与する小脳回路の同定、および小脳における情報処理メカニズムの解明を目的に研究を行い、以下の成果を得た。1)マイコンボードを用いた自作電子回路により、ヘッドプレートにより頭部を固定したマウスの前肢によるレバー押し、および報酬である水が出る吸い口を舐める動作をリアルタイムで計測し記録可能な実験装置を構築した。この装置を用いて、音刺激中に前肢によりレバーを押すオペラント条件付けを頭部固定マウスに対して行い、60%以上のマウスが1週間以内に条件付け可能な実験条件を見出した。2)アデノウイルス注入法によりプルキンエ細胞特異的に蛍光カルシウムセンサータンパク質を発現させたマウスに対して、麻酔下で頭蓋骨を除去した後にカバーガラスで脳表面を覆いデンタルセメントにより周囲を固定した観察孔を作成した。術後回復したマウスを用いて二光子励起レーザー顕微鏡によりin vivoカルシウムイメージングを行ったところ、2ヶ月以上の長期間に渡って安定して小脳プルキンエ細胞の神経活動が計測可能であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小脳プルキンエ細胞特異的にカルシウムセンサータンパク質を発現させることで、光学的に細胞の発火を計測できる実験系を構築した1年目に続き、光学測定に必須な頭部固定条件でオペラント条件付けを施す実験系の構築に成功した。また、条件付け学習の途中および学習後の小脳皮質の活動を同一個体で光学計測するために必須な観察孔の作成にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
上記の研究成果を元に、カルシウムセンサータンパク質を発現させ、小脳上に観察孔を作成したマウスにレバー押しタスクを行わせ、前肢によるレバー押しに関与する小脳皮質上の領域を同定する。さらに行動実験後のマウスから小脳を単離しScale処理により透明化を施し、プルキンエ細胞の軸索に発現するカルシウムセンサータンパク質の蛍光をコンフォーカル顕微鏡により計測することで、レバー押しに関与するプルキンエ細胞群の投射先を同定する。以上の結果により、レバー押し動作に関与する小脳の神経回路を単一細胞レベルで明らかにする。
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