研究課題/領域番号 |
24500478
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
日浦 幹夫 法政大学, スポーツ健康学部, 教授 (10327918)
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研究分担者 |
成相 直 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (00228090)
石井 賢二 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (10231135)
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キーワード | PET / cerebral blood flow / exercise / brain function |
研究概要 |
本研究は運動負荷中に陽電子放出断層撮像法(positron emission tomography ; PET)によって局所脳血流量(regional cerebral blood flow ; rCBF)を解析し、解剖学的機能分担を踏まえて脳循環調節機構を解明することを目的としている。平成25年度は平成24年度までに得られたデータの解析をさらに多面的に進めた結果、これまでの成果を報告した論文が国際的科学雑誌に掲載された。;Hiura M, Nariai T, Ishii K, Sakata M, Oda K, Toyohara J and Ishiwata K. Changes in cerebral blood flow during steady-state cycling exercise: a study using oxygen-15-labeled water with PET. Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism 2014; 34: 389-96.本論文の要旨は次の通りである。健常な若年男性(22.7±1.9才)を対象としたPET計測により、低強度の自転車エルゴメーター運動負荷中には一過性の局所脳血流量(rCBF)の増加を認め、全脳血流量で約27%、一次運動感覚野でのrCBFの増加率は約70%に及んでいた。また、運動負荷時の脳血流調節には、脳血流自動調節能や脳血管二酸化炭素反応性(Lassen. Physiol Rev. 1959)以外の要因によって変化が生じていることが提示された。 平成25年度は、同じプロトコールにて運動負荷中に近赤外分光法(near-infrared spectroscopy ; NIRS)を用いて局所酸素飽和度の計測を実施した。今後、得られたデータの検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間内で想定した計画のうち、定常負荷運動時のrCBF機能画像を得るための実験系および生理学的指標の計測については概ね計画通りに遂行できた(申請書項目1)、2))。 これまでの結果では動脈血中二酸化炭素分圧(PaCO2)の計測が困難であったため、PaCO2の計測をさらに頻回に実施し、呼気中二酸化炭素分圧の値を併せて評価することで、各脳領域の脳血管二酸化炭素反応性の検討を補足する。また、二酸化炭素吸入の手法についても再考する(申請書項目3))。これまでの運動負荷では運動中の血圧変化は生じなかったため、今後は運動様式の変更、あるいはValsalva 負荷(息こらえ)などの介入を追加して脳血管自動調節能の検討を行う(申請書項目3))。 運動負荷が仰臥位であるため、仰臥位での最大酸素摂取量を得ることが困難であった。今後は無酸素性作業閾値あるいは漸増負荷試験中の血中乳酸濃度を指標として、個々の被験者の運動強度を設定する。これまでの計測では頭部の動きに留意して観察することを優先したため、実際の運動強度の範囲は均一でなく、やや広い範囲となった。今後は、運動強度を低強度、中等強度のように、正確に群分けを実施するようにして計測を行う(申請書項目4))。また、運動継続時間の変化に関する検討も今後の課題として残されている(申請書項目4))。 平成25年度は、局所脳血流と酸素代謝の比較検討を行う目的で、PET計測と同じプロトコールにて運動負荷中の近赤外分光法(near-infrared spectroscopy ; NIRS)を用いた計測を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は運動負荷時PET計測およびNIRS計測を追加し、これまでの結果と併せて検討を重ねる。今後は運動強度、継続時間を変化させ、血圧変動については運動後の降圧効果に伴うrCBF変化を計測する。この場合は、運動中にはPET計測を行わず、運動後の頭部動揺がない状態での計測となるため、運動負荷強度、継続時間を任意に変化させることが可能であり、新たなプロトコールの作成、実施を検討している。 経頭蓋超音波ドプラ法(transcranial Doppler ultrasonography ; TCD)やNIRSを用いた計測を併せて実施し、局所脳血流量とや酸素代謝との比較や、簡便に繰り返し実施可能なTCDによる脳血流速度とrCBFとの相関を検討する。 平成26年度は運動時に自覚するきつさなどの因子に関連する各脳領域のrCBF解析を行うことを目的とし、運動中、運動前後にvisual analogue scaleや気分尺度によって、きつさや気分状態を評価しrCBFとの関係を解析する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には運動様式および強度を変化させた新たなプロトコールでのPET計測が未実施となり、平成26年度に実施することとした。そのため、平成25年度は計測に伴う諸費用、被験者への謝金等は発生せず、平成26年度に実施するための資金を留保した。 平成26年度には新たなプロトコールでのPET計測を予定しており、この関連で要する諸費用を研究資金にて充当する予定である。また、NIRSおよびTCD計測を追加するための費用が発生する見込みである。
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