研究課題/領域番号 |
24500483
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
山口 修平 島根大学, 医学部, 教授 (80135904)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 動機づけ / アパシー / 事象関連電位 / 機能的MRI / フィードバック関連陰性電位 |
研究概要 |
アパシーは自発的行動の欠如した状態であり,多くの精神・神経疾患で高頻度に出現する障害である。アパシーの病態解明のためには,動機づけを支える神経基盤の解明が重要となる。本研究では,1)その神経基盤を事象関連電位により解析し,その病態を反映する神経生理学的な客観的指標を確立する、2)安静時機能的MRIにより脳内結合性を解析し、アパシーと関連する脳内ネットワークを明らかにする事を初年度の目的とした。 まず事象関連電位研究では,内発的動機づけと外発的動機づけを独立して評価できるCue-Target-Feedback課題を作成し,健常者において基礎検討を行った。この課題はCue刺激においてその試行が報酬条件か非報酬条件かの手がかりが提示され,Targetにおいて強化学習刺激を選択し,Feedbackにおいてその選択行動の正誤を提示されるという課題である。解析の結果、CueおよびTargetに対するP3成分ではアパシーとの明瞭な関連は認められなかった。一方、報酬条件か非報酬条件かに関わらず,アパシーとフィードバック関連陰性電位(FRN)振幅には相関が認められた。この結果は強化学習課題におけるFRNがアパシーの客観的指標となりうることを示唆している。 安静時機能的MRIによる脳内ネットワークの解明研究では、多数例の健常中高齢者を対象に検討を行った。神経心理検査でアパシーとうつを同時に評価した。側坐核を含む基底核部との機能的結合性を評価した所、アパシースコアと負相関を認めた部位は吻側の前部帯状回と前頭眼窩部であった。一方、うつと負相関を認めた部位は背外側前頭前野および内側前頭前野であった。臨床的にアパシーとうつは共通面を有しているが相違点も重要であり、今回の結果は動機づけの神経基盤のなかでそれぞれが異なった神経ネットワークを基盤としていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の1つの目標はアパシー及び動機づけに関わる電気生理学的な指標を見出すことで、そのための神経心理学課題を作成し、Cue, Target, Feedbackのそれぞれの刺激に対する事象関連電位記録を実施し、さらにアパシーに関わる電位を同定できた。一方で、内発的動機づけと外発的動機の分離に関しては成功していない。この点で、神経心理課題の改変が必要と考えている。 2つ目の目標のアパシーに関連した脳内神経ネットワークの解明については、うつと明確に分離ができており、これまでの病巣研究とも一致した結果が得られており、目標は達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
達成度でも述べたように、まず内発性動機づけと外発的動機づけの分離が可能な神経心理課題の改変を行う予定である。課題の構成は前年と同様にCue-Target-Feedback課題とし、新奇刺激の工夫を行うことで新規探索性を誘発する課題設定とし、Feedback刺激に関して報酬関連刺激と無関連刺激の物理的差異をなくす工夫を行い、誘発電位の潜時が同じようになるように変更を加える予定である。この課題変更の妥当性を検証した上で、解析に関しては緩電位成分解析にさらに周波数解析を加えて、高周波帯域の事象関連同期を検討する予定である。これによりさらに詳細な電気活動の変化を検討が可能となる。 機能的MRIによる検討では、安静時記録に関しては神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病)の患者集団を対象に、アパシーに関連した安静時神経ネットワークの変容を検討する予定である。さらに、上記の神経心理課題が仮説通りに有効であれば、課題遂行中の機能的MRIによる検討を加えて脳活動部位の検討をおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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