研究課題/領域番号 |
24500483
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
山口 修平 島根大学, 医学部, 教授 (80135904)
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キーワード | 動機づけ / アパシー |
研究概要 |
アパシーは認知機能の障害や感情障害によらず,自発的・目標志向的行動の欠如した状態であり,多くの精神・神経疾患で高頻度に出現する障害である。本研究では昨年度から継続して,1)アパシーの神経基盤を事象関連電位(event-related potentials: ERP)により解析し,その病態を反映する神経生理学的な客観的指標を確立する,2)安静時fMRI(resting-state functional MRI: rsfMRI)により脳の機能的結合を評価し,アパシーと関連する脳内ネットワークを明らかにすることを目的とした。 まず,昨年度作成した内発的動機づけと外発的動機づけを独立して評価できるCue-Target-Feddback課題の改変を行った。新たな課題はパフォーマンスに対するフィードバックが伴う単純な反応選択課題とした。その課題において,フィードバックが金銭的報酬を伴う条件,フィードバックがパフォーマンスのみを示す条件,フィードバックがランダムに提示される条件を設定した。この報酬あり条件ではパフォーマンスが向上し,外的動機づけの操作が可能であることが確認された。 また,rsfMRIにおける解析では,高齢者のアパシーを対象として検討を行った。基底核を興味のある領域(ROI)として設定し,全脳との機能的結合においてアパシーの影響を検討したところ,基底核と補足運動野及び背外側前頭前野との結合低下が顕著に関連していた。この結果は,アパシーは基底核と前頭葉の機能的乖離として理解できる可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度では昨年から継続して,アパシー及び動機づけに関わる電気生理学的な指標を見出すことを一つの目標とした。動機づけを反映する神経心理学的課題を昨年度に作成し,事象関連電位を測定してきた。その課題ではフィードバックに用いた刺激が,報酬条件では符合を伴う数値で,報酬なし条件では○及び×という幾何学図形であった。フィードバック刺激における複雑さが条件で異なったため,フィードバック関連陰性電位の潜時に差が認めれた。この刺激の複雑性の交絡を防ぐため,課題の改良を行ったため,遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
改変した課題を用いて健常者,及び神経疾患患者における事象関連電位の測定を進める。解析対象はフィードバック関連陰性電位に加え,フィードバック刺激に対する予期を反映した刺激前陰性電位とし,さらに事象関連(脱)同期の解析も行う。これらの指標とアパシーとの関連を精緻に検討していく。 また安静時fMRIの測定もパーキンソン病患者及び認知症患者を対象に進める。これらの疾患ではアパシーを高頻度に認める。疾患患者におけるアパシーの有無がいずれの脳機能ネットワークの障害に異存しているかを基底核を中心に検討していく。
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