研究課題/領域番号 |
24500484
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
山田 俊幸 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20183981)
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研究分担者 |
土田 成紀 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20142862)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 弘前ヘアレスラット / 胸腺 / 制御性T細胞 / B1-B細胞 / 樹状細胞 / Ly49s3遺伝子 |
研究概要 |
弘前ヘアレスラット(HHR)はSDラット(SDR)より自然発生した乏毛ラットである。HHR胸腺では制御性T細胞 (nTreg)の分化が抑制され、B1-B細胞と思われる細胞が異所性に存在する。また、自己免疫疾患の特徴である皮下へのリンパ球の浸潤が認められるが、これはnTreg数の低下とB1-B細胞数の増加に起因すると推察される。HHRは免疫細胞の相互作用や機能を制御するLy49s3遺伝子を欠失しており、その結果として胸腺樹状細胞から同遺伝子の発現が消失している。胸腺樹状細胞はnTregの分化誘導に重要な役割を果たし、またリンパ球の誘引や増殖に関与する可能性があるため、HHRの免疫異常はLy49s3遺伝子を失ったことによる胸腺樹状細胞の性質の変化が原因である可能性が考えられる。 そこで本年度はHHRの胸腺樹状細胞のnTregの分化誘導能を検討した。HHR胸腺とSDR胸腺のそれぞれより樹状細胞とnTregの前駆細胞であるCD4-SP細胞を単離し、混合培養してCD4-SP細胞のnTregへの分化を評価した。RT-PCR解析により、HHR胸腺由来の細胞同士の混合培養ではSDR由来の細胞同士の混合培養に比べてFoxp3、CD25、Ctla4、Pd-1といったnTregのマーカー遺伝子の発現誘導が低下していることが示され、HHRの胸腺樹状細胞ではnTregの分化誘導能が低下しているものと推察された。そこで次に、ウイルスベクターによりLy49s3遺伝子を導入したHHR胸腺由来の樹状細胞とHHRのCD4-SP 細胞とを混合培養したところ、nTregのマーカー遺伝子の発現誘導が回復するというデータが得られた。 これらの結果から、HHR胸腺でのnTregの分化抑制はLy49s3遺伝子の発現を失った胸腺樹状細胞にその原因があると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画に掲げた二つの項目(1)「HHR胸腺樹状細胞の、制御性T細胞に対する分化誘導能を探る」と(2)「HHR胸腺に存在する成熟B細胞がB1-B細胞であることを証明し、HHR胸腺樹状細胞のB1-B細胞に対する誘引能や分化誘導能を探る」のうち、(1)に関しては達成され、(2)に関しては報告書に記載する段階ではないが、基礎的なデータは得られつつある。また来年度以降の研究計画に掲げた「Ly49s3遺伝子がHHRの免疫異常の原因遺伝子であることを示す」のうち、ウイルスベクターを用いた実験についてもすでに実行し、成果が得られている。 以上のことから、本年度の研究計画はほぼ予定通りに進んでいるものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降も申請書に述べた研究計画に従い、研究を推進する。 まず初めに、今年度は達成途中であった「HHR胸腺に存在する成熟B細胞がB1-B細胞であることを証明し、HHR胸腺樹状細胞のB1-B細胞に対する誘引能や分化誘導能を探る」の項目を完了する。 引き続き、その次の研究計画である「胸腺樹状細胞や胸腺の移植実験を通じて免疫異常の原因が胸腺樹状細胞にあることを示す」を実行に移す。時間がかかる計画であるので早めに着手したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度以降の研究計画に変更点はないので、研究費の使用計画にも大きな変更はないものと思われる。しかしながら、飼育動物数が予想を上回っているため、動物実験施設使用料が予定額を上回るかもしれない。
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