研究課題
(初めの2年間で実施した研究の成果)(1)弘前へアレスラット(HHR)胸腺内ではCD4陽性の制御性T細胞の分化が抑制されていること、そしてその原因は胸腺樹状細胞からのLy49s3遺伝子の発現消失によるものであることを示した。また、(2)HHR胸腺内には自然免疫に関わるB1-B細胞と思われる細胞が定着し成熟している可能性を示した。(最終年度に実施した研究の成果)HHR胸腺内のT細胞は、その分化に重要な時期であるCD4+/CD8+細胞期においてCD4の発現が低いことから、上記(1)に述べた制御性T細胞の分化抑制に加えて、同じくCD4陽性のヘルパーT細胞の分化の不全も疑われた。そこで HHR に抗原を投与したところ、正常のSDラットに比べて抗体産生量が低く、脾臓の胚中心での抗体産生細胞の数は低下し、さらに胚中心に存在する濾胞性ヘルパーT細胞では機能分子の発現が低下していた。これらのことから、やはりHHRではヘルパーT細胞の分化が抑制されているものと考えられた。一方、HHR胸腺のCD4+/CD8+細胞では免疫機能に重要なビタミンAの誘導体であるレチノイン酸の作用を制御する遺伝子の発現が乱れており、レチノイン酸が作用しにくい状況にあると想像された。今後はビタミンAの作用が胸腺でのT細胞の分化にどのような効果を及ぼすのかについて解析を進める予定である(平成27年度、基盤研究C交付内定課題)。(全体を通じてのまとめ)免疫制御遺伝子Ly49s3を欠損したHHRでは、その胸腺でCD4陽性の制御性T細胞やヘルパーT細胞の分化が抑制されていることが示された。しかしながら、ヘルパーT細胞の分化抑制に起因すると思われる脾臓での免疫反応の低下は、胸腺に存在するB1-B細胞の自然免疫が補償しているものと考えられた。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Oncology Reports
巻: 33 ページ: 2151-2160
10.3892/or.2015.3814