研究課題/領域番号 |
24500485
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
金井 正美 東京医科歯科大学, 実験動物センター, 教授 (70321883)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 肝炎 / Sox17 / 先天性疾患 |
研究概要 |
Sox17遺伝子は細胞の上皮化、管腔形成に必須であることが知られている。我々の作出したSox17ノックアウト個体は胎生致死で、内胚葉発生に必須であることをすでに発表している。そこで、その遺伝子背景をC57BL/6マウスに置換したところ、得られた個体は新生児肝炎の症状を呈した。原因追求のため胎生後期の胎児を観察したところ、Sox17内在性発現が胆嚢と胆管上皮に認められ、95%の個体で生後致死を呈した。また、そのうちの62.5%のヘテロ変異体では17.5 日胚 (55/88)で、様々な程度の肝臓周辺部の変性が認められた。この変性部位では肝臓細胞の成熟マーカーであるPAS染色は陰性を示し、16.5-17日胚から始めて病変を呈し、急激に悪化することで肝臓重量も著しく低下した。また、胎生肝臓は肝臓細胞、血管内皮、血球細胞から成るが、全ての形態、分化能は正常であった。ただし、胆嚢領域の形成不全 (DBAレクチントレース)と細胞増殖(BrdU取り込み能)低下が観察され、変性部分の肝臓細胞ではERストレスマーカーであるGRP78が陽性、電顕レベルでのバルーン化変性が観察された。以上の結果から、Sox17が器官形成後期に胆嚢と胆管形成に量依存的な機能を有することが明らかとなった。先天性新生児肝炎の20%はウイルス感染によるものであるが、それ以外の80%の発症機序については不明であり、その解明と治療法の検討が待たれている。本例を詳細に検討することで、新生児肝炎の原因追及に大きく貢献出来るものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年の研究計画としては、実験1)胆管系の形成、発達過程における時空間的なSox17の発現パターンの解析 実験2)Sox17欠損胚における肝臓、胆管、膵臓の初期発生の表現系の解析を挙げていた。Sox17ヘテロ個体は129/SvJからC57BL/6の5世代目のバッククロスで90%の生後致死が観察されるが、全身病理所見では、器官形成後期に肝臓周辺と胆嚢に変成が確認された。胎生16.5-17日齢で肝臓周辺部の肝臓細胞はPAS(成熟正常肝臓細胞は陽性)が陰性で、肝臓重量も著しく現象した。DABレクチンwhole stainingで胆嚢領域の脆弱化も観察され、各種マーカー(Foxl1, Hnf6, Hes1,Hhex, Lgr4)のプロファイリングから、Sox17へテロ変異個体はtissue-autonomousな変性があり、その結果、肝炎様の病変を呈する可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
本申請は、単なるSOX17因子の胆管形成領域における分子関与を観察するのみでは無く、器官形成期プロセスにおける肝臓、膵臓の発生、発達に関わる胆管系の役割について新たな知見を得る。Sox17遺伝子がC57BL/6遺伝背景において、SOX9(屈曲肢異形成症)、SOX10(Hirschsprung症候群、巨大結腸症)と同様に、バプロ不全により胆管形成異常を伴う新生児急性肝炎のモデルマウスとして世界初に開発することを目指す。また、医学、実験動物学領域において、Sox17遺伝子は新生児の胆管形成異常と肝臓の炎症の原因遺伝子候補でもあり、本課題により、今度、先天性疾患克服への基盤開発に繋がるものである。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の実験計画;1) 前腸領域を含む肝臓、胆嚢、胆管、膵臓原基(9.5日齢胚)の器官培養法を用いたSox17欠損胚の発生、発達能;Sox17欠損胚のorgan cultureを確立し、レトロもしくはレンチウイルスを用いて強制発現によるrecsure実験を行う。 2) TRECK(toxin recepter-mediated cell knock out)法を用いた、内胚葉再構築の可視化;Sox17-GFPもしくはSox17-Cheery knock in マウスとジフテリア毒素を用いて、特異的細胞死を引き起こす方法を用いて膵臓と肝臓特異的細胞死を引き起こし、その再生過程を観察する。
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