研究課題/領域番号 |
24500487
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
森 政之 信州大学, 医学系研究科, 准教授 (60273190)
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キーワード | 潰瘍性大腸炎 / 疾患モデル / マウス / 遺伝子 |
研究概要 |
SAMP1とFVB/N系マウスの間での多型を検索し、さらに(FVB/N x SAMP1)F2交雑仔のgenotypingを行なうことにより、潰瘍性大腸炎の発症に関与する修飾遺伝子の存在領域を第16番染色体上の55個の遺伝子を含む約7 Mbの領域に絞り込むことができた。このうち22個の遺伝子に関して変異(多型)検索を行なったが、潰瘍性大腸炎の発症に関与することが疑われるようなものは同定されなかった。 この領域に修飾遺伝子が存在することを確認するために、SAMP1にFVB/N系マウスの染色体領域を導入したコンジェニック系マウスの作出を試み、N5世代まで進めた。また、N4F1世代を育種し、第16番染色体の当該領域がFVB/N由来のホモ型の個体を得た。現在、潰瘍性大腸炎の発症の有無を経過観察中である。 同定したFVB/N系マウスのInterferon (alpha and beta) receptor 1 (Ifnar1)遺伝子内のミスセンス塩基置換多型の関与を検証するために、FVB/NにSAMP1の機能喪失型Abcb1a遺伝子をコンジェニック導入し、N4世代を得た。さらにIfnar1のノックアウト対立遺伝子を導入し、FVB/N型対立遺伝子とのヘテロマウスを作出導入して相補性試験を試みている。現在、潰瘍性大腸炎の発症の有無を経過観察中である。 IFNAR1の活性測定法の確立を目指しつつ、塩基置換により生じるIFNAR1内のH274Rアミノ酸置換の影響の調査を試みた。野生型、およびH274Rアミノ酸置換を有するIFNAR1を発現するプラスミドを構築し、培養細胞にトランスフェクトして発現させた。これにマウスINF-αまたはINF-βを添加して反応を測定したが、予測される微妙な差を検出できるほどにはこのアッセイ系の感度が良くないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までに第16番染色体上の原因候補遺伝子としてIfnar1遺伝子上の塩基多型の同定を完了し、その遺伝子のノックアウトマウスとSAMP1系マウスの交配実験を遂行することができた。しかしながらこの過程で、当初の我々の仮説とは異なり、潰瘍性大腸炎の発症にはFVB/N系マウスに由来する第13番染色体上の遺伝子が必須であることを示唆するデータが得られた。そのために、コンジェニック系マウスの確立が必要となった。マウスは1世代の進行に約3ヶ月を要し、コンジェニック系マウスの確立には最低8世代進める必要があるために、当初の計画よりも達成度が遅れている。また、I型インターフェロン受容体の活性測定法は過去には報告が無く、その確立が難航していることも達成度が遅れる原因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
コンジェニック系マウスを利用した潰瘍性大腸炎発症の修飾遺伝子が当該染色体領域内にあることの確認、当該染色体領域内にある未調査の遺伝子に関する多型(変異)検索、およびIfnar1遺伝子内のミスセンス変異がABCB1A欠損条件下で潰瘍性大腸炎発症への感受性を規定するものであるか否かの検証を併せて進める。 SAMP1系マウスにFVB/N系マウスの第16番染色体を導入したコンジェニックマウスから、その導入領域をさらに小さくしたサブコンジェニック系マウスを複数確立することにより、修飾遺伝子の存在領域の限局を試みる。 当該染色体領域内にある未調査の30個の遺伝子に関して、PCRクローニングと塩基配列決定により、FVB/N とSAMP1マウス系統間での塩基配列多型(突然変異)を検索する。 Ifnar1遺伝子内のミスセンス変異がABCB1A欠損条件下で潰瘍性大腸炎発症への感受性を規定するものであるか否かを検証するために、FVB/NにSAMP1の機能喪失型Abcb1a遺伝子をコンジェニック導入し、さらにIfnar1のノックアウト対立遺伝子を導入し、FVB/N型対立遺伝子とのヘテロマウスを作出導入して相補性試験を試みる。また、I型インターフェロン受容体のレポーター遺伝子活性測定法を考案し、その有効性を実証しつつミスセンス変異が機能的多型であるか否かを検証する。また、FVB/N、およびSAMP1系マウスより胎児性繊維芽細胞(MEF)を確立し、I型インターフェロンに対する反応性を比較調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画よりも研究の遂行が遅れているために、それを土台として進める予定であった実験に必要な物品の購入、および実験用マウスの飼育維持費、マウスの飼育補助を依頼する大学院生への謝金、および予定していた研究成果の学会発表のための出張旅費、研究成果投稿料として計上していた分の次年度使用額が生じた。 残額と平成26年度経費を合わせ、物品費は、実験用マウス(SAMP1、FVB/N、Ifnar1遺伝子ノックアウトマウス)、遺伝子クローニング、細胞培養、レポーターアッセイに必要な試薬類、その他の消耗品(プラスチックチュブなど)の購入に充てる。旅費は、本研究成果の発表のために5月に札幌市で開催される日本実験動物学会への出張を予定しており、その費用として使用する。人件費は、マウスの飼育補助を依頼する大学院生への謝金として使用する。その他の費用は、マウス飼育費用、および研究成果投稿料(英文校閲を含む)として使用する。
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