FVB/N系マウスの第16番染色体上に存在し、かつAbcb1a遺伝子の機能喪失依存的な潰瘍性大腸炎の発症に関与する遺伝子のポジショナルクローニングを試みた。 最終年度は、第16番染色体上の約7 Mbの領域に存在する26個の遺伝子のコード領域の塩基配列に関して変異(多型)検索を行なったが、潰瘍性大腸炎の発症に関与することが疑われるようなものは同定されなかった。SAMP1にFVB/N系マウスの染色体領域を導入したコンジェニック系マウス(N4F1世代)を作出した。第16番染色体の当該領域がFVB/N由来のホモ型マウスの一部には軽度の潰瘍性大腸炎が認められたことから、当該領域に修飾遺伝子が存在することが確認された。 FVB/Nに機能喪失型Abcb1a遺伝子、およびInterferon (alpha and beta) receptor 1 (Ifnar1)のノックアウト対立遺伝子をコンジェニック導入し、N7F1世代を得た。これらのマウスの一部には軽度の潰瘍性大腸炎が認められたが、FVB/N系マウスが有するIfnar1遺伝子内のミスセンス塩基置換多型がABCB1A欠損条件下で潰瘍性大腸炎発症への感受性を規定するものであるか否かは完全には証明されなかった。 研究期間全体を通じてAbcb1a遺伝子の機能喪失依存的な潰瘍性大腸炎の発症に関与する修飾遺伝子の存在領域をFVB/N系マウスの第16番染色体上の55個の遺伝子を含む約7 Mbの領域に絞り込むことができた。しかしながら、この領域に存在する計48個の遺伝子の中には、Ifnar1遺伝子中のミスセンス塩基置換多型以外に潰瘍性大腸炎の発症に関与することが疑われるようなものは同定されなかった。塩基置換により生じるIFNAR1内のH274Rアミノ酸置換の影響に関する調査を試みたが、IFNAR1活性測定法の感度が低く、良好な結果が得られなかった。
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