研究課題/領域番号 |
24500488
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
角田 茂 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (80345032)
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研究分担者 |
松本 清司 信州大学, ヒト環境科学研究支援センター, 教授 (40173893)
森 政之 信州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60273190)
長瀬 尚志 信州大学, 医学部, 助教 (70303451)
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キーワード | 炎症 / 疾患モデル動物 / インターロイキン |
研究概要 |
「炎症」は多様な生命現象に関与しており、その中でIL-1は炎症制御に重要な役割を担っている。IL-1の内在性抑制性分子であるIL-1レセプターアンタゴニスト(Ra)を欠損させたマウスは多彩な表現型を示し、自己免疫性リウマチ様関節炎や「自己炎症」性乾癬様皮膚炎などを自然発症する。一方、IL-1Raには通常の分泌型に加えて細胞質内型アイソフォームが存在すること、細胞質内に存在するIL-1α前駆体は特定の条件下において核移行し転写因子として機能するなど、未だ不明な点が多く残されている。 そこで本研究では、アイソフォーム特異的遺伝子欠損マウスを作製、解析することにより、IL-1Ra欠損マウスで見られる多彩な表現型の分子機構を明らかにし、また、新たな疾患モデル動物の確立を目指す。 平成25年度は、BALB/c背景のIL-1Ra完全欠損、分泌型(s)IL-1Ra欠損、細胞質内型(ic)IL-1Ra欠損マウスの表現型の比較解析を中心に行い、s/icIL-1Raアイソフォームによる炎症抑制における役割分担について検討した。BALB/c背景のIL-1Ra完全欠損マウスは、炎症性自己免疫疾患モデルマウスであり、リウマチ様関節炎や乾癬様皮膚炎を自然発症する。新たに作出したsIL-1Ra欠損マウスはリウマチ様関節炎のみ自然発症したのに対して、icIL-1Ra欠損マウスは予想に反して外見上特に異常は認められなかった。また、新規ゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9法を用いて核移行シグナル欠損型pro-IL-1αノックインマウスの作出に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2013年初頭にほ乳類細胞において初めての成功報告がなされた新規ゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9法をすぐに取り入れ、当初計画していたES細胞を用いたノックインマウスの作製からの切り替えを行ったことにより、新規に樹立予定だった点変異マウス(pro-IL-1α核移行シグナル欠損マウス)の作出を、想定よりも早く成功することができた。
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今後の研究の推進方策 |
新たに樹立したBALB/c背景sIL-1Ra欠損マウスは、リウマチ様関節炎のみ自然発症したことから、新規のリウマチモデルマウスと言えるのに対して、BALB/c背景icIL-1Ra欠損マウスは予想に反して外見上特に異常は認められなかった(皮膚炎が発症しない)。この分子機構を解析するとともに、詳細な表現型解析を行う。 また、新規に樹立したpro-IL-1α核移行シグナル欠損マウスの表現型解析を進めることにより、IL-1シグナルの全貌を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
新規の遺伝子変異マウス作製について、当初予定していたES細胞利用法からCRISPR/Cas9によるゲノム編集法に変更を行ったため、樹立後の点変異ノックインマウスの遺伝子検査法が通常の方法ではできなくなり、別の方法に切り替えることが必要となった。 新規遺伝子診断法の確立を行うための試薬類の購入に充て、消耗品費として使用する。
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