研究課題/領域番号 |
24500494
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
北村 浩 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80312403)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マクロファージ / 2型糖尿病 / 慢性炎症 / 脂肪組織 / 肥満 / トランスジェニックマウス / ノックアウトマウス / ob/obマウス |
研究概要 |
1.遺伝型肥満モデルマウス(ob/obマウス)およびコントロールマウスを比較したところ、生殖器周囲脂肪組織重量、血糖や血中脂質、空腹時インスリンレベル、脂肪間質のF4/80+, CD11b+マクロファージのPAI-1, TNF, aP2レベルの増加がみられ、糖尿病の兆候が確認された。このとき、M-modの発現は大幅に減少していた。 2.これまでに確立したマクロファージ特異的M-modトランスジェニックマウスに高脂肪食を与え、形質解析を行った。高脂肪食を14週間与えたところ、トランスジェニックマウスとコントロールマウスで摂食量、体重ともに有意な差は見られなかった。また空腹時の血中インスリン濃度や随時血糖、血中脂質(中性脂肪、遊離脂肪酸、総コレステロール)にも有意な差は見られなかった。しかしながら腸間膜脂肪組織へのマクロファージの浸潤がわずかに抑えられていた。FACS解析の結果、M1様、M2様マクロファージの亜集団比には顕著な差は見られなかった。 3.マクロファージ特異的M-modノックアウトマウス作製のためのflox/floxマウスの作成を試みた。当初予定したスケールでの繁殖ではキメラ率の低いマウスしか無かったためflox/floxマウスを得られなかった。しかし大規模繁殖を行い良好なキメラを得た。 4.M-modノックダウン細胞を用いてM-mod標的遺伝子座のヒストンのアセチル化、メチル化等の修飾を免疫沈降法で調べ増加または減少を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ob/obマウスの評価は予定通りの進捗で、予想通りの成果を得た。トランスジェニックマウスの評価は予想に反して大幅な糖尿病症状の改善は見られなかったが予定通りの検討はおおむね行えた。ノックアウトマウスは作製途中であり、クロマチン修飾の解析もまだ調べられていない修飾があるが、それぞれ一定の材料やデータは得ており、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
M-modトランスジェニックマウスの解析は現在確認した週齢で弱いながらも改善の傾向がみられることから給餌期間を延ばしさらに評価を続ける。また分離マクロファージの遺伝子発現解析や脂肪組織の機能変化、糖負荷試験やインスリン抵抗性試験、糖クランプ試験なども行う。 一方でノックアウトマウス作製についても継続し、M-mod トランスジェニックマウス同様の個体レベル、脂肪組織レベル、分離細胞レベルでの形質変化を調べ、糖尿病制御に対するM-modの役割をより明確にする。 さらに、網羅的なヒストン修飾のモニタリングを進め、M-modの多少による標的遺伝子座の状態をより包括的にとらえる。またM-modと会合するヒストン制御分子や核内々タンパク質の同定を試みる。即ちM-modを免疫沈降させ会合する分子をウエスタンブロット法や質量分析で同定する。これまでの予備的検討ではM-mod複合体をうまく免疫沈降させることに成功していない。そのためクロスリンクの方法を検討するともにHA-tagを付加したM-modを安定発現する細胞の作製を試みる。さらにM-modを欠損させたりM-modの機能ドメインと思われる領域を欠損させた細胞を用いて核内のM-mod含有下流の数や大きさの変化を追う。
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次年度の研究費の使用計画 |
M-modトランスジェニックマウスは長期間(半年から1年)高脂肪食給餌し、昨年度同様の代謝機能の変化を調べる。加えて、3カ月及び長期間高脂肪食給餌マウスの糖負荷試験、インスリン負荷試験、糖クランプ試験や脂肪組織の遺伝子発現を調べることでより厳密な代謝能の変化をとらえる。また脂肪マクロファージの微量RNA増幅をおこない遺伝子発現解析を行うことでこれら細胞の機能変化を捉える。 M-modノックアウトマウスについてはflox/floxマウスを完成させ、そこからマクロファージ特異的M-modノックアウトマウスの作製を終える。 網羅的なヒストン修飾解析を推し進めどういった修飾を受けているのか明らかにする。またレンチウイルスベクターを用いて、M-mod-HAキメラを安定発現するマクロファージ細胞株の樹立を進め、会合分子解析のための基盤を固める。また、比較的遺伝子導入の容易なHeLa細胞や293細胞を用いての会合分子の探索を本格化する。一方でM-modの機能ドメインと思われる部分に変異を入れた発現ベクターを構築する。
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