研究課題
1.マクロファージ選択的な the fms intronic regulatory element (FIRE) 存在下でM-mod を発現するトランスジェニック(Tg)マウスに高脂肪食を1年程度まで給餌し、コントロールマウスと比較したところ、わずかな体重減少と、インスリン感受性の改善が認められた。またTgマウスから分離したマクロファージを豊富に含む間質画分を用いてマイクロアレイ解析を実施したところ、Tgマウスでは僅かに炎症関連分子の発現低下が見られた。2.C57BL/6マウスバックグラウンドのES細胞を用いて、前年度までに作製したキメラマウスから、M-mod flox/floxマウスの作製を試みた。なかなか生殖系細胞に相同組み換えが見られるマウスが得られなかったが、研究協力者の協力の基、大量繁殖を行いM-mod flox/floxマウスを複数ライン樹立することに成功した。さらにこれとLyzM-Creマウスをかけあわせることでマクロファージ選択的なM-modコンディショナルノックアウトマウスを作製した。3.これまでに樹立したM-modノックダウン細胞およびコントロール細胞を用いて、マクロファージ様細胞の分化刺激後、ヒストンタンパク質の修飾(アセチル化、メチル化、ユビキチン化、リン酸化)をウェスタンブロット及びクロマチン免疫沈降法で網羅的に調べた。これらの修飾の全体量には影響が無かった。しかしながら、ノックダウン細胞のaP2遺伝子座で、H4ヒストンの5、8、12番目のアセチル化の亢進が見られた。またこれまで見出していたH3ヒストンのメチル化が4番目のリジンのメチル化であることが明らかとなった。これらの変化に一致して、aP2遺伝子座のアクセシビリティの亢進が見られた。
2: おおむね順調に進展している
生殖細胞で組み換えが見られるマウス個体が得られず、樹立が難行していたM-mod flox/floxマウスの作製を終え、さらにマクロファージ選択的なM-modノックアウトマウスが作製できたのは計画通りである。予想に反しM-mod Tgマウスでの表現型の変化は軽微であったが、Tgマウスの長期高脂肪食給餌実験を遂行し、脂肪間質画分でのトランスクリプトーム解析を実施できたのも計画通りである。M-modノックダウン細胞を用いた網羅的なヒストン修飾解析で、H3ヒストンのメチル化の領域を明らかにするとともに、新たにH4ヒストンのアセチル化の変化を見出せたのは、今後のM-modの機能メカニズム解明のための足がかりとなる知見を得たことに他ならず、総じ当初の目的や計画に沿った結果を得られていると判断した。
1.これまでのM-mod Tgマウスを用いた検討では、劇的な糖尿病の改善が認められなかった。これはTgマウスのマクロファージにおけるM-modタンパク量の増加が緩やかであったことに起因することが考えられた。そこで次にM-mod遺伝子ノックアウトマウスを用いて個体レベルでの役割を再評価することにした。即ち、これまでに樹立したマクロファージ選択的M-modコンディショナルノックアウトマウスに高脂肪食を給餌し、体重・摂食量・血糖・血中脂肪酸を測定するとともに、インスリン感受性を調べM-modの糖尿病における役割をより明確にする。また、このとき脂肪組織及び免疫臓器におけるマクロファージの数や遺伝子発現を評価することで、細胞レベルでのM-modの役割を明らかにする。2.M-modの作用メカニズムの詳細をさらに調べる。 M-modノックダウン細胞とコントロール細胞を比較することで、H4ヒストンのアセチル化酵素や、H3ヒストンのメチル化酵素やその修飾タンパク質の量的な変化を調べる。また免疫沈降法により、M-modと核内で会合するタンパク質を濃縮・検出し、質量分析により同定を試みる。またM-modは核内で小顆粒状の局在を示すことから、核内小顆粒(スペックルやパラスペックルなど)のマーカー分子との局在比較を行う。一方でM-modの発現変化により量や活性に影響が見られるタンパク質キナーゼや転写因子スクリーニングし、影響の見られた分子またはその上流分子とM-modの会合を評価する。
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