研究課題/領域番号 |
24500497
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
佐々木 啓 東京医科大学, 医学部, 講師 (20384969)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 肺パスツレラ / 細菌毒素 / 日和見病原体 / 感染症 |
研究概要 |
2012年度は、当初の計画通り、肺パスツレラの病原因子の解析と遺伝子破壊株の作製を試みた。 病原因子については、ゲノムクローニングから新たに複数の溶血素や血球凝集素をコードしていると考えられる遺伝子群の部分配列を決定した。しかしながら、いずれの遺伝子にもAT配列が豊富なため、ゲノムウォーキングやinverse PCRといった手法を用いてもすべてのopen reading frameの配列を決定することが出来なかった。遺伝子破壊株の作製に至っては、肺パスツレラ生菌体にエレクトロポレーションや接合などの手法を用いたがいずれの方法も細胞内への遺伝子導入には至らず結果は得られなかった。 2012年度は当初の計画の他に、肺パスツレラから同定されたRTX タンパク質の内、最も分子量が大きいPnxIIIAタンパク質を用いた経鼻ワクチンの効果について試験を行った。PnxIIIAは細胞外膜上に発現され、細胞外マトリックスに接着性を示すことが明らかになっている。そこで、モデル実験も兼ねPnxIIIAタンパク質のワクチン効果やワクチンの輸送システムの効果があるかを検証した。PnxIIIAタンパク質の免疫原性と接着性の機能を残した改変PnxIIIA(MP3)を作製し、経鼻ワクチンとしてマウスに投与しその後肺パスツレラの感染実験を行った。その結果、MP3タンパク質の3回以上(1回/週)の経鼻投与で肺パスツレラの感染をほぼ抑制出来ることがわかった。このとき、血中ならびに気管支肺胞洗浄液のIgA抗体価が100を超えることが確認された。このことは、MP3の投与で分泌型IgAの産生が促進され肺パスツレラの感染が成立する前に速やかに排除されたことを示す。また、MP3は3時間以上もマウスの鼻腔内に付着していることが確認され、ワクチン抗原の輸送担体としても有用であることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2013年度から所属機関を異動することになり、2012年度は当初の計画をすべて達成することが出来なかった。また技術的な理由としては、目的の遺伝子群が低GC領域に集中しており、目的の遺伝子を得るのに数回のスクリーニングを繰り返さなければならなかった。そのため現状では塩基配列の決定速度は大幅に低下したが、ゲノムウォーキングとinverse PCRによって確実に解読は出来ているため次年度以降は新たな成果が期待できる。また、遺伝子破壊株については、様々なベクターを使用したり、トランスポゾンなども使用したりしたが、肺パスツレラの細胞内に導入することが出来なかった。2013年度以降引き続き検討していきたいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
2012年度は、肺パスツレラの様々な毒素のクローニングを行ったが、いずれも機能や作用まで試験する時間的な余裕が無かった。2013年度は、前年度の反省点を生かし、最も病態に影響を及ぼしそうな毒素タンパク質に絞って機能や作用について明らかにしていきたい。また、2013年度は、当初の計画のほかに、宿主細胞の応答性についても、培養細胞を用いて検討する計画である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
2013年度は、所属機関が変わるため、研究環境を整備することに注力したいと考えている。新たな所属では遺伝子解析に関係する分子生物学的な機器、機材は整っているため、タンパク質解析に必要な機器や消耗品の整備を中心に研究費を活用していきたい。
|