研究課題/領域番号 |
24500497
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
佐々木 啓 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 助教 (20384969)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肺パスツレラ / ドラフトゲノム解析 / 赤血球凝集素 / RTX toxin |
研究実績の概要 |
今年度は肺パスツレラの病原因子を特定するため、ドラフトゲノム解析と、菌体外に分泌される高分子タンパク質の解析を行った。ドラフトゲノム解析は、Pacific Bioscience社のPacBio RSIIを用い、菌株はタイプストレインであるATCC 35149 (NCTC 8141)について行った。約一万塩基のゲノム断片を解析していき、肺パスツレラゲノムのおよそ200倍量の塩基配列を解析した。肺パスツレラゲノムのほぼ全域の配列を決定し、難題であった繰り返し配列も読み取ることができたと考えられる。詳細な遺伝子配列については、GenBankにBBIX01000001からBBIX01000009の番号として登録した。ドラフトゲノム解析で明らかになった病原性因子の一つは、RTX (repeat in toxin) toxinをコードする遺伝子が計4種存在した。当該研究者がこれまで同定した3種のRTX toxin以外にもう一種RTX motifが存在する遺伝子産物が産生されることが明らかになった。このほか、数種の溶血素をコードする遺伝子の存在がわかったが、遺伝子産物の予測結果からは、強い溶血性ではなくα溶血に近い作用か、若しくはほかの機能を有しているものと予想された。肺パスツレラの菌体外に分泌される病原因子の一つとして血球凝集素 (HA)が知られている。ドラフトゲノム解析から2つの高分子HAをコードする遺伝子が存在した。近縁種のP. multocidaのHAに相同性があり、細胞や組織への接着や貪食作用に対する抵抗性に関与していると考えられた。また、細菌毒素としてはあまり例がない、リン酸化やAMPylationといった特殊な病原性の機序に関係すると考えられ、今後、作用を解明していく計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2013年度に所属機関を異動したため、いまだ実験環境を整えつつ研究活動を行っている。またドラフトゲノム解析で得られた膨大な遺伝子データの解析に時間を費やしてしまい、生化学的な試験を十分に行えなかった。とくにノックアウト株の作出については、近縁種のシャトルベクター数種を試したが、いずれも肺パスツレラ細胞内に導入することができなかった。そのため、野生株のプラスミドやファージを調査するとともに、病原因子陰性の野生株からスクリーニングを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子解析や感染実験については、外部受託機関を併用し、協力研究者とともに進めていく計画である。また、血球凝集素とRTX toxinが宿主細胞応答に及ぼす影響に的を絞り、ノックアウト株の作出に拘らず、ノックダウンや病原因子陰性の野生株を用いて比較対象となる解析を進めていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2013年度から所属機関を異動し、実験室整備と外注委託への支出に留まったため、使用額に差が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、外注での遺伝子解析と所属機関内で行えるin vitro実験に分配注力し、研究を進めていきたいと考えている。
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