本研究目的は、生体内で"ヒト肝臓細胞からヒト膵ランゲルハンス島(ラ氏島)細胞"を効率よく分化転換誘導する方法を確立することである。インシュリン産生機能を失ったラ氏島細胞は、肝細胞のような強い自己再生力を持たないため、自然回復することなく糖尿病へと進展する。最近、膵臓と共通の起源より発生する肝臓にラ氏島形成に重要な役割を果たす遺伝子を発現させ、"ラ氏島細胞"に分化転換誘導する報告が齧歯類を使った実験で示され、糖尿病治療の新たな可能性が示された。応募者らは苦痛を伴う現在の治療法(インシュリンの反復投与)に代わる遺伝子治療法が、「ヒト」でも実現可能か"ヒト肝臓"を保有する"ヒト化肝臓マウス"を用いて実証研究を試みる。先ず、AAV2- Pdx1-Ngn3-GFP、AAV2- Pdx1-GFPおよびAAV2-GFPの投与ルート、高血糖抑制効果の限界時期などの基礎的検討を、STZによる糖尿病モデルマウスを用いて検証した。その結果、AAV2の血糖抑制高は、7×10^7GCの力価を持つAAV2の尾静脈投与では全く効果が得られず、同力価の経脾臓投与で血糖抑制効果を投与後6週間示した。これらの結果を基に、ヒト化肝臓マウスを用いたSTZによる糖尿病の抑制効果を検討した。その結果、7×10^7GCの力価を持つAAV2 AAV2- Pdx1-GFPはヒト化肝臓マウスでの500mg/dlの血糖を300mg/dlまで抑制し、その血清中にヒトインシュリンを検出した。AAV2投与後6週間目でのFCM解析の結果、ヒト肝臓領域に多く遺伝子導入されていた。従って、ヒト化肝臓マウスは、AAVを用いた遺伝子治療の評価に適しており、AAV2- Pdx1-Ngn3-GFPおよびAAV2- Pdx1-GFPはAAV2- Pdx1-Ngn3-GFPおよびAAV2- Pdx1-GFPは、糖尿病治療に急性的に効果を示すことがマウスを用いた「ヒト」での実験で明らかになった。
|