研究課題
内耳外有毛細胞(OHC)は聴覚機能において極めて重大な役割を担っている。本研究で、ジフテリア毒素(DT)を投与することにより、任意の時期にOHCを特異的に破壊することが可能なOHC-TRECKマウスを開発した。OHC-TRECKマウスにDTを投与すると、OHCが特異的に欠失し、重度の難聴を呈する。OHC-TRECKマウスは成体だけでなく、出生直後(生後0日)にDTを投与してもOHCを破壊することが可能であり、聴覚のメカニズムおよびOHCの形成のメカニズムの解明に非常に有用なツールとなることが期待された。OHC特異的発現遺伝子を網羅的に探索することを目的として、DT投与および非投与のOHC-TRECKマウスおよび野生型マウスの内耳RNAを用いたマイクロアレイ解析を行った結果、Oncomodulin遺伝子(Ocm)の発現がDT投与OHC-TRECKマウスで著しく減少することを発見した。Ocmの聴覚における機能を解析するために、CRISPR/Cas9システムによりOcmノックアウトマウスを樹立し、表現型を現在解析中である。さらに、OHCの形成あるいは聴覚機能に関与する遺伝子を探索し、そのメカニズムを明らかにすることを目的として、OHCの形態形成に重要な生後初期(生後1日)あるいは形成後(生後4週)でDTを投与し、DT投与後および非投与のOHC-TRECKマウスおよび野生型マウスの内耳蝸牛における遺伝子発現のRNA-seq解析を行った。その結果、マイクロアレイ解析で同定したOcmやOHC特異的モータータンパク質をコードするPrestinをはじめとして、GABA作動性ニューロン関連遺伝子群がDT投与OHC-TRECKマウスで大きく減少することが明らかとなった。この結果は、哺乳類の聴覚路でGABAが抑制性神経伝達物質として重要な働きを担っていることを裏付けている。
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Exp. Anim.
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10.1538/expanim.14-0110
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