研究課題/領域番号 |
24500505
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
森田 真史 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20112667)
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研究分担者 |
三木 将仁 埼玉大学, 研究機構総合技術支援センター, 専門技術員 (90515066)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 人工関節 / トライボロジー / ポリエチレン / ルースニング / Ti後金 / 精密加工 |
研究実績の概要 |
人工関節摺動面で発生するPE摩耗粉の問題は今なお未解決課題である。摺動面に流体潤滑膜を常時維持することでPE臼蓋と骨頭球の固体接触を避けて摩耗を防ぐことが可能である。我々は、型彫放電加工とボール研削による骨頭球の高真球精度加工技術を開発した。低剛性でかつ生体適合性に優れたTi-13Nb-13Zr製人工骨頭とPE臼蓋による摺動面に流体潤滑膜の形成維持を容易にし、PE臼蓋が直接摩擦されることを避けることでPE摩耗粉を低減した。それにはTi-13Nb-13Zr骨頭の真球精度の高い加工技術が必要である。PEの摩耗の問題は相手面である骨頭球の材質、形状に大きく依存する。従来のCo-Cr合金製骨頭は金属としての耐摩耗性には定評があるが、耐食性はCr酸化膜に依存するためにSUS316Lと同等に低く、イオン溶出が懸念される。特に摺動部材として表面が絶えず摩擦される環境にあっては不動態膜の維持は難しい。試算では流体潤滑を維持するために、骨頭球とPE臼蓋の半径隙間を20μm以下にする必要があった。回転式型彫り放電加工およびボール研削盤加工による従来の製法とは異なる新たな骨頭球の加工技術を開発した。試作した骨頭球およびPE臼蓋を用いた人工股関節シミュレータ試験を実施し、摺動部の摩擦トルクおよび電気化学的手法により潤滑膜形成維持能を評価した。主な結果として、φ28mm骨頭球の真球度は0.75μm、表面粗さはRa<0.05μm、PE臼蓋の真球度は8.73μm以下、半径隙間は8μmを達成した。静的引き離し試験では市販品の8倍、歩行周期(1Hz)の股関節シミュレータ試験では半径隙間が10μmで0.21Nm、40μmでは0.25Nmであり、半径隙間が小さいほど潤滑効果がより大きく認められるものの、恒常的に流体潤滑が維持できているとは断定できず、一部に固体間接触が残ると判断された。
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