平成26年度は次の4つのテーマについて検討した。(1)シミュレータへの高周波磁場不均一の導入、(2)シミュレータへの渦電流磁場の導入、(3)圧縮センシング適用MRIにおける位相エンコード選択法の評価、(4)生体内磁性体の定量的磁化率マッピング、である。(1)では、拡散係数計測で問題となっていた高周波磁場不均一をシミュレータへ導入することに成功したため、その影響の定量的評価が可能となった。応用例として、拡散係数計測で多用される2点法の問題点とその解決策への適用例を示した。(2)では、渦電流磁場をシミュレータに導入し、超高速撮像における画質への影響を定量的に示した。(3)では、圧縮センシングをMRIに適用した場合に問題となる、位相エンコードの間引き法について、シミュレータを用いて詳細に検討した。従来は実機を用いて評価する必要があったため、詳細な検討は困難であった。(4)では、脳への鉄沈着を高精度でマッピングする新規な技術を開発した。鉄沈着は様々な脳疾患を誘起すると考えられており、定量化が急がれていた。従来法では、定量性と信号雑音比とがトレードオフの関係にあったが、26年度開発の技術を発展させ、両立させる方法を提案し、シミュレータで確認した。以上の成果は学会発表済であり、(3)と(4)は本年4月及び3月に論文投稿した。(1)と(2)は投稿準備中である。 研究期間全体を通して得られた成果は、(1)新規な高速法の考案により、拡散強調画像シミュレータを世界で始めて実用化したこと、(2)これまで考慮できなかった高周波磁場不均一、静磁場不均一、渦電流磁場の導入を可能にしたこと、(3)一層の高速化のために、圧縮センシングをシミュレータに導入したこと、副産物として、(4)磁化率分布の順問題及び逆問題に関する新規な方法を提案し、シミュレータで確認したこと、である。ただし、想定外の分野が拓けてきたため、実験での検証は未完であった。
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