研究課題/領域番号 |
24500507
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
海老沢 嘉伸 静岡大学, 工学部, 教授 (40213574)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヒューマンインタフェース / 瞳孔検出 |
研究概要 |
画像処理を用いたドライバーの状態検知の開発は、脇見検知、眼瞼の開閉による居眠り検知装置が、実用化されている。今後、期待されるのは、ドライバーが道路標識や信号などを見ているかを明らかにする視線検出技術であると言える。しかし、黒目、目尻、目頭等、曖昧な特徴を検出する画像処理では視線検出精度が足りない。カメラを利用して高精度な視線検出ができる方法として、眼球の瞳孔と光源の角膜反射を検出して、両者の相対位置から視線を検出する方法がある。しかし、瞳孔が極端に小さくなる高照度条件下では瞳孔も角膜反射も検出困難である。本研究の目的は、瞳孔が極端に小さい状況下で視線を検出する技術の基礎技術を創成することである。 期間内に、開口部内から2波長光を出射させ顔画像を撮影する新規光学系を設計・試作し、高速度カメラを利用した光源発光法と画像取得法を組み合わせ、画像処理法の実時間処理を実現することで、新規光学系の有効性を確かめ、今後の瞳孔・角膜反射検出光学系の開発に有用な示唆を与えることにある。 上記の目的のために、ビデオカメラのレンズ前方に楕円ミラー(短径3mm)を設置し、中心波長850nmのハイパワー反射型LEDの小型レンズにより集光させ、上述のミラーを反射させて、被験者の顔に光を照射させ、さらに顔画像をカメラで撮影するための光学系を試作した。指向性の強く光の平行度の高いLEDを使用したため、LED1個にも関わらず、顔全体が映る視野角のカメラにおいて、瞳孔を光らせることに成功した。室内であれば、問題なく瞳孔を検出できるだけ瞳孔輝度が得られることを確かめた。 なお、当初、瞳孔研究用光学系を試作する際に、複数のプリズム組合せ、内部に楕円ミラーを挟み込む方法を取った。しかし、プリズムの前面、後面での反射が画像を汚し、容易には解決できないことが明らかになったため、ミラ―を支柱で立てる方式に変更した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来、2種類の波長のLEDの光をカメラレンズの開口部内からは射出して、明瞳孔画像と暗瞳孔画像を撮影する予定であったが、最初に試作した瞳孔検出用光学系において、LED光の集光の困難さと予想外の光学系内部での反射があり、2波長の使用を断念した。2波長のうちの1波長のみを開口部内から発光させ、明瞳孔画像を得る形態に変更し、暗瞳孔は試作した光学系の前面にリング状に並べた光源(従来のもの)で代用することにした。 カメラのレンズの前方に45度に傾けた楕円ミラーを配置し、集光したLED光をそのミラーで反射させ、顔に照射し、カメラで画像をとらえることに成功した。今回、ハイパワー反射型LEDを使用したため、通常の弾丸型のLEDに比べて効率の良いため、予想通り、弾丸型に比べて1個のLEDにしては数倍の輝度の顔画像が得られた。しかしながら、次の問題が明らかになった。 (1)使用した反射型LEDは、電流を流すための端子が発光した光の経路内に存在するため、それが障害となり、顔画像に端子の影が映ってしまい、それが瞳孔検出の障害となりうる。(2)本来、開口部外に設置したLEDで近赤外光を顔に照射するのに比べ、開口部内から光を照射するため、顔に対する瞳孔の輝度が比率が大きくなることを期待していたが、期待通りではなかった。その理由として、ミラー自体が開口部をふさぐことになり、そのミラーに位置から光が射出するということは、実質的に開口部外から光を照射するのと等価である、と考察された。ただし、実験の途中で反射型LEDが破損したため、確かな確認はできていない。
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今後の研究の推進方策 |
被験者の顔面にLEDの電極の影が映ってしまうことを解決するには、特別な反射型LEDを作ってもらうしか方法が思い当たらず、小さな資金では困難なため断念する。代わりに高パワー砲弾型LEDを使用する。この場合、集光が困難なため、光学系内部で光が拡散して画像が汚れないようにするため、弾丸型LEDの周りに光を吸収する材料を巻き、前方±12度程度の範囲に光を放出できるようし、小型ミラーの代わりにハーフミラーを利用する。そのほか、ハーフミラーの反対側に吸収材料を取り付けるなどする。波長が短いほうがカメラの感度が上昇するため、これまでの850nmに対して、810nmを使用し、IR780のフィルターを通して光を射出する。以上によって、昨年度に問題となった2点に関して改善する方向で研究を進める。 2年度に予定していた偏光ビームスプリッタ―と1/4波長板を使用した眼鏡反射除去の検討については、本研究期間中での実施はそれを断念する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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