研究課題/領域番号 |
24500510
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
安澤 幹人 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (70210250)
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キーワード | バイオセンサ / 血糖値 / 低血糖症 / 低侵襲 / CGMS / 糖尿病 / 酵素電極 / パッチ |
研究概要 |
25年度は、24年度に確立した微細電極作製技術を基にグルコースセンサを作製し、リン酸緩衝液中のインビトロ評価、並びに実験動物を用いたインビボ評価を行った。その結果、洞穴先端内部のセンシング部位の調製(制限)が必要であること分かった。これはセンシング部位が管内部深くまである場合、浸透したグルコースの排出に時間を要するため、センサ応答に大きなタイムラグが生じた。そこで管内部に接着剤を注入し、センシング部位及び管内部容積を減少させたところ、感度は減少したものの、センサ応答速度の向上が見られた。 センサ針をプラスチック部材にしたパッチ型センサ作製では、主にPETフィルムの熱圧縮成形によるプラスチックセンサ針を試作したが、管内深さ1ミリ程度のセンサ作製への適用を考慮し、硬直なPEEK材も検討した。3D切削加工機を用いて作製した外径0.3 mmのPEEK製センサ針は、十分な強度を有し、先端部も硬直であったことから皮膚内部へも容易に挿入可能であった。 微細管内部の特定領域への酵素固定技術の研究においては、従来の電解析出と電解重合を組み合わせた酵素固定法では、2種類の電解液を用いる必要があることから、1種類の電解液での酵素固定が可能な電解析出と光重合を組み合わせた酵素固定法を前年度に引き続き検討した。電解液の調整方法、すなわち、用いる酵素、界面活性剤、メタクリル化合物、開始剤等を混合する順番を変更することにより、得られる酵素電極のセンサ感度が著しく向上することが分かった。また種々の官能基を有する5種類のメタクリル化合物を用いてグルコースオキシダーゼの固定を試みた結果、水酸基を有する2-ヒドロキシエチルメタクリレートを使用することにより最も感度の髙いセンサが得られることが分かった。 なお、動物実験は田辺R&Dサービス(大阪)で行う計画であったが、施設が使用できなかったことから、大学内の動物実験施設で行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度に確立した微細電極作製技術を基にグルコースセンサを試作し、インビトロ測定に加え、実験動物(マウス)を用いたインビボ測定で評価したところ、グルコース濃度変化に良好に追随するセンサは得られず、大きなタイムラグが生じることが分かった。本研究で開発するセンサは低血糖の早期発見を目的とすることから、センサ応答速度において改善が必須である。そこでセンシング部位及び管内部深いを減少させたところ、インビトロ測定においてセンサ応答速度の向上が確認された。なお、管内部深さの減少は、センサ感度の低下に繋がることから、次年度はセンサ応答速度およびセンサ感度の両面において良好なグルコースセンサを作製する条件を導く必要がある。 センサ針をプラスチック部材にしたパッチ型センサ開発研究では、PET材を用いたものに加え、PEEK材を用いたセンサ針の作製も試みた。PEEK製のセンサ針は、PET製のものに比べて硬直であり、皮膚内部に容易に挿入可能であったことから、プラスチック製パッチ型センサの材料として有用であることが分かった。次年度はPEEK材を用いたパッチ型グルコースセンサの作製および評価を行う。 微細管内部への酵素固定技術研究では、電解析出と光重合を組み合わせた酵素固定法において、電解液の調整方法の見直しを行ったところ、センサ感度の大幅な改善が見られた。また、メタクリル化合物として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを用いることにより、これまで用いてきたメタクリル化合物に比べ、倍以上のセンサ感度が得られた。しかし、生体内に存在する電気化学的物質の影響の抑制は不十分であったことから、更なる改善が必要である。 得られた研究成果は、化学センサ研究発表会(第55回、56回)及び224th ECS Meeting 等で発表した。 以上のことから、本研究においてセンサ応答速度の改善等、必須の課題が存在するが、現在まで、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で開発するグルコースセンサは、従来のものより著しく低侵襲なセンサとなるが、センサ応答速度が遅いと、薬物治療等を行っている糖尿病患者が心配する低血糖症の早期発見が困難になる。次年度は、管内部深さの最適化と共に、テーパー針の先端内部に配置したセンシング部位の形状の検討も行う。また、これまでセンサの形状作製は白金管等、管形状から出発して作製する方法を用いてきたが、次年度は新たに棒状のものに穴を開けて 先端内部にセンシング部位を形成するセンサ作製法についても試みる。 プラスチック製パッチ型センサではPEEK材を用いたグルコースセンサを中心に作製し、そのセンサ特性評価を行う。 26年度の研究費は、センサ作製のための材料費、及び動物実験を行うための費用が主である。センサ作製のための材料としては、白金線、白金管、酵素、絶縁膜材料、PEEK材、先端加工費等である。また、動物実験を行うための費用としては、実験動物の購入費用、動物実験施設使用料・管理費用である。このほか、学会発表(2014年電気化学秋季大会)および情報収集(第57回日本糖尿病学会年次学術集会)のための旅費である。
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次年度の研究費の使用計画 |
繰越額 79,344円の内77,700円は、3月末に参加発表を行った電気化学会第81回大会(第56回化学センサ研究発表会)の旅費である。当該年度において、1,644円が未使用となったが、購入可能な必要物品がなかったことから、次年度の物品費と合わせて使用することにした。 次年度の物品費と合わせてセンサ作製材料の購入に使用する。
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