研究課題/領域番号 |
24500511
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
弘田 隆省 高知大学, 医学部附属病院, 特任助教 (10437741)
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研究分担者 |
山崎 文靖 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (10243841)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 先端機能デバイス / 医療・福祉 / 医療工学 / 起立性低血圧 / 低侵襲治療システム |
研究概要 |
従来用いられているパーキンソン病治療における深部脳刺激法を交感神経遠心路の一部としてシステムに組み入れた人工圧受容器反射射装置を着想した。そこで、三年間の実験的臨床研究により、深部脳刺激による血圧応答性を同定し、血圧低下を代償する血圧サーボシステムがもっとも安定的かつ迅速に作動する制御中枢プログラムを設計する。H24年度は「脳埋め込み電極刺激時の血圧へのデータを記録」を開始し、一部症例ではランダム刺激を行い、血圧への応答性を評価した。 【方法】深部脳刺激治療を行っているパーキンソン病患者で、刺激電圧、部位を変化させ、血圧測定を行った。血圧は通常の上腕カフ型血圧計および非侵襲的連続血圧測定装置を用いた。上腕血圧は、刺激なし→刺激→刺激なし→刺激→刺激なしで、それぞれ開始より1分後に測定した。刺激時に収縮期血圧が3mmHg以上上昇するものを有意とした。ランダム刺激はPCからのコマンドに従い手動でコントローラーをon/offし、解析は心電図波形の雑音の有無で行った。 【結果】31例の患者(年齢67±9歳、男性17, 女性14)で検討した。1) 上腕血圧測定は60回行い、そのうち、視床下核(STN)への刺激かつ電極刺激部位が単極で0がプラス、ジェネレーターケースがマイナスのもの40回を検討した。40回中、上昇10回(25%)、変化なし20回(50%)、低下2回(5%)、刺激による症状で検討できなかったものが8回(20%)であった。2) 1)で上昇を認めた症例中7例を対象にランダム刺激10回を行った。10回中、2回は刺激症状で中止した。得られたデータ8回中5回で血圧への反応を認め、2回ははっきりせず、1回はソフトスタートのため解析不能であった。反応の認められた症例のステップ応答関数では、刺激により迅速な血圧応答が認められ、20秒以内に定常ゲインの80%以上に達した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
十分な症例数でのデータが蓄積されつつある。また、ランダム刺激による血圧応答関数の算出も開始できており、おおむね良好に進行している。ただ、刺激電極の先端刺激部は0, 1, 2, 3の4極からなり、各電極間で刺激を行う双極刺激と、ジェネレーターを片極とする単極刺激を行う。どちらにするか、また、刺激強度や刺激周波数は、各患者の症状改善度および刺激時の副作用症状、たとえば、刺激側の痛みなどによって決定されており、患者によってそれぞれ異なる。その電極の刺激状況を変化させるために、刺激時に症状が出る症例を認めたため、刺激部位と刺激強度の検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は、刺激から血圧までの伝達関数の記述・同定を行うため、ランダム刺激による血圧変化を記録する症例を増やし、記録したランダムな刺激から血圧までの応答関数の平均値H2(f)を算出する。また、H24の成果より以下の検討を要する。1) 現時点ではほとんどの刺激を上記部位で行った。他の部位の検討をする必要がある。2) 刺激時の症状が強い症例は検討できない。3) ランダム刺激で血圧への影響が認められた症例でも、コヒーレンスが低く、刺激を強くして(電流、刺激周波数を大きくする)検討するのが良いが、症状との兼ね合いがあり難しい。4) 明らかに刺激により上昇する症例で、立位負荷をして血圧変化を見ることができれば、より臨床的有用性が大きい。5) 上腕血圧測定で低下した症例が2例あった。この症例もランダム刺激をして血圧への影響を検討する必要がある。 連携協力者として佐藤隆幸医師(循環制御学)、野口達哉医師(循環制御学)が装置の動作原理の開発に協力し、研究協力者として森田ゆかり医師(神経内科)、清家真人医師(いずみの病院、脳神経外科)、豊永晋一医師(土佐市民病院、脳神経外科)がパーキンソン病患者フォローに協力する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費として、上腕血圧測定用カフ、液性因子解析費用を計上する。人件費・謝金として、前年と同様、研究補助員を1名確保するための経費を計上する。また、成果発表旅費、印刷費を計上する。
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