研究実績の概要 |
従来用いられているパーキンソン病治療における深部脳刺激法を交感神経遠心路の一部としてシステムに組み入れた人工圧受容器反射射装置を着想した。そこで、三年間の実験的臨床研究により、深部脳刺激による血圧応答性を同定し、血圧低下を代償する血圧サーボシステムがもっとも安定的かつ迅速に作動する制御中枢プログラムを設計する。H26年度は、深部脳刺激から血圧までの伝達関数の記述・同定を行うため、H24-25に記録したランダムな刺激から血圧までの応答関数の平均値H2(f)を算出した。さらに、立位負荷時の血圧低下度を一定頻度の刺激で評価した。 【方法】1) 制御中枢に用いるサーボコントローラの動作原理は,いわゆる,比例・積分補償型のネガティブフィードバックを採用した。ランダムな刺激に対する血圧の応答特性用いて求められた平均的なH2(f)を用いて,ステップ状の血圧低下に対する血圧サーボシステムの振る舞いをシミュレーションし,もっとも安定的かつ迅速に血圧低下を代償する係数を決定する。2) 立位負荷時の血圧低下度を一定頻度の刺激で評価する。 【結果】1) 14例(年齢64±12歳、男性7, 女性7、電極挿入手術後145±154週)を対象に、視床下核(STN)へのランダム刺激を25回行い血圧への反応を検討した。反応の認められた13回の平均ステップ応答関数では、刺激により迅速な血圧応答が認められ、10秒以内に定常ゲインの90%以上に達した。定常ゲインは0.015±0.013mmHg/Hzであった。この反応関数を用いて、血圧サーボシステムの比例補償係数Kp=1, 積分補償係数Ki=0.01を決定した。2) 16例(年齢68±9歳、男性9, 女性7)を対象に、立位負荷を行い、一定の深部脳刺激が血圧低下に影響するかを検討したが、深部脳刺激は血圧低下に影響しなかった。
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