研究課題/領域番号 |
24500514
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
高橋 正信 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (20338312)
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研究分担者 |
中野 雅行 横浜市立大学, 大学病院, 特任教授 (00092073)
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キーワード | 病理組織 / 診断支援 / 画像解析 |
研究概要 |
【目的】病理組織の画像解析において,通常の明視野を含む複数の撮像法を活用した画像解析手法を実現するとともに,撮像法を変えて複数回撮影する代わりに,それらの合成画像を一度に撮影できる新しい撮像法(合成撮像法)を実現する.そして,それら実現した機能を利用し,診断支援機能を実現する.さらに,病理診断時の観察法としての合成撮像法の有用性も評価する. 【研究成果】平成25年度は、色フィルタを利用した合成撮像法について検討した結果,明視野,暗視野,位相差の3種類の撮像法に対応する光の透過部分に色フィルタを用いることにより,ある撮像法のRチャンネルの画像と,別の撮像法のBチャンネルの画像を一度の撮影で得られることがわかった.これにより,1チャンネルずつであるが,撮像法の異なる2枚の画像を一度の撮影で得ることが可能となり,従来の重み付き加算だけでなく,減算や分離したままの画像の利用が可能となった. また,合成撮像法で利用する3種類の撮像法を組み合わせた画像解析の応用として,無染色標本の画像解析にも取組んだ.その結果,撮像法を組み合わせることで,肝臓の無染色標本から細胞膜を抽出する精度を改善できることを明らかにした.さらに,胃のHE染色標本から画像処理によりピロリ菌を検出する手法についても検討した結果,明視野画像のみを用いる場合よりも,位相差と暗視野画像の合成画像を用いる方が良好な結果が得られることを明らかにした. 合成撮像法を用いた病理組織標本の観察法としては,通常の明視野では観察しづらい無染色標本を対象とした場合に,その視認性を向上できる可能性があることを明らかにした.また,診断に有用な可能性のある特徴量として,明視野画像を用いてHE染色標本中の肝細胞の核の密度と形状特徴(円形度)を自動的に算出する機能を実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり,色フィルタを利用して重み付き加算以外の合成画像を撮影する手法を実現できた.また,前年度に実現した核位置の抽出法を改良し,肝細胞の核の密度と形状特徴(円形度)を自動的に算出する機能を実現できた.さらに,胃のHE染色標本から画像処理によりピロリ菌を抽出する場合に,通常の明視野画像より暗視野と位相差の合成画像を用いる方が優れていることを明らかにした.通常の診断には利用されない無染色標本の利用についても新たに検討し,合成撮像法によりその視認性を向上できる可能性があることを明らかにするとともに,HE染色標本と同様に,無染色標本からも細胞膜を抽出できることを明らかにするなど,ほぼ当初の予定どおり順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,これまでに実現した構成要素の識別法や特徴量の算出法などを改良するとともに,評価を行う.特に,特徴量の有用性については病理医である中野の指導のもとに医学的な有用性について評価する.最終的には,診断支援システムによって特徴量の抽出機能を利用者が容易に利用できるようにする予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果を国際会議で発表する予定であったが,国内で開催された国際会議で発表したため旅費が少なくて済んだ.その分の旅費は次年度の国際会議などでの発表に使用する予定である. 昨年度に引き続き,色フィルタやそれらを加工する費用,および画像解析に必要な計算機の部品代などに利用する予定である.また,国際会議などでの研究成果の発表や研究成果を公開するためのホームページ作成,管理費用,標本作成費用にも利用する予定である.
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