研究課題/領域番号 |
24500515
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
菊川 久夫 東海大学, 工学部, 教授 (50246162)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 画像相関法 |
研究概要 |
骨強度推定の因子として、骨のリモデリング機構(代謝・再生・修復)の解明が重要であり、そのためには、骨内に生じるひずみ分布の特徴付けを正確に行う必要がある。臨床においては、非侵襲的にCTやMRIの画像から骨内のひずみ分布を容易に可視化することができれば、各種骨疾患の診断に有力な手段となり得る。本研究では、骨折の破壊危機レベルを表す指標を見出すために、破壊じん性試験により得られた皮質骨損傷画像(無負荷ならびに負荷)に対し、開発した画像相関法解析システムを適用し、ひずみ解析を行う。その結果より、骨組織の微小損傷(破壊特性)とひずみ分布パターンとの対応関係を明らかにする。さらに、臨床応用を目指して、適切な画像処理条件を見出すことを目的としている。 そのため、まずウシ大腿骨骨幹部より採取した皮質骨の微小損傷発生実験(破壊じん性試験)を行った。実験は試験片に設けたスリット先端より進展する微小損傷観察画像を高速度カメラにより撮影し、詳細に観察した。また、この画像に対しデジタル画像相関法によるひずみ解析を実施し、観察画像とひずみ場、両者の対応関係を評価した。 MRIを用いた実験は、画像相関法により骨梁のひずみ解析を行うため、無負荷時と負荷時のMR画像の取得が必要である。この場合、MRI装置内で、しかも被験者を仰向けの状態にて膝関節に負荷を与える必要がある。この状態を満足させる関節荷重負荷装置の開発が実験遂行上重要となる。平成24年度はこの装置の設計構想を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の主な目的は、(1)開発した画像相関法プログラムの妥当性評価、(2)画像相関法を用いたブタ海綿骨の微小損傷発生実験により骨組織の破壊特性と組織ひずみパターンとの対応関係の定量化、(3)MR画像に画像相関法を適用し健常成人ならびにブタの膝関節海綿骨骨梁のひずみ分布の定量化、ならびに(4)数値実験(応力解析)により(1)、(2)で行った画像相関法によるひずみ解析の妥当性を評価することである。 まず実験に用いた骨組織であるが、一定の安定した機械的特性を有する骨の入手が困難という観点から、ウシ皮質骨への変更を行って実験を行い、目的(1)については画像相関法による本システムのひずみ量の測定値が一般構造材料のひずみ測定において理論値とよく一致していることから、本手法の有効性を確認している。これらの結果から骨組織に対する測定精度についても問題がないと考えている。しかし、目的のブタ海綿骨骨梁パターンについての実施が遅れている。 目的(2)については、骨の微小損傷領域とひずみの発生領域の対応を目視で観察するに至ってはいるが、骨折進展予測の観点からは、定量化に関して各ひずみ成分のさらに詳しい評価が必要である。目的(3)の実験計画であるが、被験者を仰向けの状態にて膝関節に負荷を加える関節荷重負荷装置の開発において、装置の考案を行っている最中である。しかし、MRIの磁場の影響を受けることのない材料の選定が必要であり、強度の面で設計構想が難航している。 最後に、有限要素法による応力解析については、微小損傷試験で用いたウシ皮質骨試験片に対し解析を行い、目的(1)における妥当性評価が終了したところでありる。以上の結果より、本画像相関法による測定結果を裏付ける結果を得ている。しかし、モデル構築に必要な医用画像ソフトウェアの購入が今回できなかったため、モデルの制作が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進の方策として、MRIによる骨梁の撮影が重要となってくる。負荷条件は破壊じん性試験を参考に、無負荷と負荷の状態で撮影を行う。試験片のMRIへの固定は、磁場の影響を避けるため、アクリル樹脂製の自家考案の三点曲げ破壊じん性試験片固定治具を用いる。平成25年度にこれらの製作を行う予定である。しかし、MRIの磁場の影響を受けることのない材料の選定が必要であり、強度の面で平成24年度の構想段階より製作が難航している。 撮影条件は、試験片の皮質骨の変形状態を1.5T-MRI装置を用いて、直径5cmの極小表面コイルにて空間分解能300μm以下の画像を取得する。取得した画像は画像相関法によるひずみ解析に用い、皮質骨のひずみ分布を得る予定である。 画像相関法については本計画の根幹をなす測定技術である。現在、JAVA言語によりプログラムが開発されており、測定の精度について妥当性が得られている。その結果、ひずみ測定がかなりの精度で可能となっている。しかし、構造の複雑な海綿骨骨梁に対しては皮質骨に比較して測定精度の向上が必要であるため、アルゴリズムの改良を随時行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
得られた成果については、日本臨床バイオメカニクス学会等で口頭発表ならびに学会誌に投稿予定である。また、海外での適切な学会に報告を検討中である。よって次年度の研究費はこれらの出張費、論文投稿費等に充てる予定である。 なお、平成24年度から平成25年度へ助成金の繰越が発生した理由として、当初想定していた画像管理ソフトがバージョンアップによる値上がりのため購入不可能となったためで、平成25年度において価格・性能をあらためて検討し、必要であれば購入予定である。購入の必要がない場合には、現有の有限要素解析ソフトのサポート代としたい。
|