本研究の全体構想は、MRIにより得られた膝海綿骨骨梁のひずみ分布を、開発したデジタル画像相関法ひずみ解析システムを用いて可視化することが目的である。骨梁に発生する目に見えないほどの小さな骨折(マイクロクラック)は骨のリモデリング(代謝・再生・修復)を促すと考えられている。このマイクロクラックの発生機構とひずみ分布の関係を定量化できれば、骨折の予防や骨折後の修復など、各種骨外傷や骨疾患などの診断に有効な手段となり得る。そのため本研究では一貫して、ひずみ解析システムの測定精度の向上や、MRI装置内で膝関節に一定荷重を加えることが可能な装置の設計に努めてきた。 MRI内での撮像は、強い磁場中での安全性を考慮に入れた装置の設計が必要で、膝関節に有効なひずみを発生させるほどの一定荷重を加えることが可能な装置の試作がまず一つの課題であった。また、本研究で開発したデジタル画像相関法を基礎におく骨ひずみ分布測定システムは、試作段階では骨試料表面にランダムパターンの塗布が必要であったのに対し、臨床で使用する場合、このようなパターンの塗布は事実上不可能である。そのため、最終年度は荷重負荷装置の試作機完成と、ランダムパターンの塗布の必要がない画像の撮像条件などの回避策の新たな考案について研究の焦点を絞った。 本年度は、人を対象として計画を実行することはできなかったが、当初の計画通り、荷重負荷装置に設置したブタ膝関節を用いて撮像が行える状態まで負荷装置試作が進んだ。また、ひずみ分布可視化システムについては、ランダムパターンの問題が残されたものの、骨試料に対して、今後の臨床応用に十分耐え得るひずみの定量的測定が行えるまでの精度の向上が見込めたと考えている。
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