研究課題/領域番号 |
24500517
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
峰島 三千男 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (50166097)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | モニタリングシステム / 透析液排液 / 吸光度 / レーザー血流計 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き透析量モニタリングシステムの開発を検討した。具体的には、透析液排液中の溶質濃度の連続モニタリングであるが、280nmの波長域において指数関数的な吸光度の経時減少が得られ、この変化がしばしば透析量の指標となる尿素の濃度変化に高い相関が得られることをすでに確認している。しかし単成分系水溶液実験の結果、この波長領域では尿素やクレアチニンなどの吸光度の値はきわめて低く、むしろ尿酸やアルブミンとの定量に強い相関が得られた。そこで臨床的にも有用と思われる透析液排液中アルブミン濃度の連続モニタリングシステムの開発に焦点をあて、本年度は実験を繰り返した。具体的には、臨床から得られた透析液排液(倫理委員会承認済み)を限外濾過し、その濾過前後の差分吸光度とアルブミン濃度との関係を調べたところ高い相関が得られた。臨床上重要となる透析量(上述の既存法)と透析液排液中アルブミン濃度を組み合わせた連続モニタリングシステムの開発の可能性が示唆された。 また、開発当初から関わった最軽量、小型レーザー血流計が2015年1月に上市された。我々が目指すナビゲーション透析システムのうち、急激な血圧低下などを未然に回避するナビゲーションを可能とする基盤技術であり、本システムの重要な構成要素の1つとなると考えている。 現在、在宅透析では、患者の体調や生活スタイルに応じた治療スケジュールの透析が可能であり、それに併せた小型専用の在宅用透析装置の開発が急務となっている。本年度は、在宅用透析装置に求められる性能を設定し、それを満足させる透析装置の仕様を理論計算により求めた。例えば、短時間頻回透析(週6回、1回2時間)を施行するための透析液量(流量)は外来透析の半分以下で済むことが明らかとなった。省スペースが求められる在宅治療において、小型の専用透析装置の開発が必須と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で目指している「在宅睡眠時ナビゲーション透析システムの開発」のうち、透析液排液中溶質濃度連続モニタ「透析量モニタ」については至適波長領域の確認ができており、モニタ開発の礎は確認されている。また限外濾過処理前後の差分吸光度にもとづく「アルブミン漏出量の連続モニタ」開発へ向けた基礎実験を実施し開発の可能性が確認された。研究代表者が開発当初から関わった患者末梢循環モニタとしての小型、軽量レーザー血流計が上市され、本システムの構成要素の1つとなり得ることを確認した。 さらに在宅専用透析装置に望まれる仕様について理論計算を行い、現在の外来透析用透析装置の約半分の大きさの小型が可能であることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(最終年度)は、上述のモニタリング技術によるナビゲーション機構を搭載した小型専用透析装置の開発に向けた基盤技術の整備を行っていく所存である。実機の開発は困難なため、具体的にはシミュレーションを通じ、ナビゲーション機能をもつ仮想透析装置の設計とその検証実験を施行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
その他経費が当初予定していた額よりも少額で済んだため
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次年度使用額の使用計画 |
システム開発のための検証実験に必要となる試薬・検査・物品費ならびに成果発表に必要な諸費等を計上する予定である。
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