研究実績の概要 |
本研究課題に必要となる基盤技術の創出を手がけた。1つは透析液排液中の溶質濃度の連続モニタリングで、280nmの波長域において指数関数的な吸光度の経時減少が尿素の濃度変化に高い相関が得られることはすでに確認済である。本年度に実施した単成分系水溶液実験の結果、この波長領域では尿素の吸光度はほとんどなく、むしろアルブミンとの定量に強い相関が得られた。そこで臨床的にも有用と思われる透析液排液中アルブミン濃度の連続モニタリングシステムの開発に焦点をあて、その確認実験を実施した。具体的には、実際の臨床で得られた経時的な透析液排液を限外濾過し、その濾過前後の差分吸光度とアルブミン濃度との関係を調べたところ高い相関が得られた。 また、開発当初から関わった最軽量、小型レーザー血流計が上市され,我々が目指すナビゲーション透析システムのうち、急激な血圧低下などを未然に回避するナビゲーション透析を可能とする基盤技術であり、本システムの重要な構成要素の1つとして利用可能である。 在宅透析では、患者の体調や生活スタイルに合わせた小型透析装置の開発が不可欠である。本研究課題では小型在宅用透析装置に具備すべき性能条件を割り出し、それを満足させる装置仕様を理論計算により求めた。例えば、短時間頻回透析(週6回、1回2時間)を施行するための透析液量(流量)は現在の施設外来透析の半分以下で済むことが明らかとなった。 さらに最終年度である本年度は、上記基盤技術をベースとしたナビゲーション透析を可能とするアルゴリズムの開発に着手した。具体的には体内compartment modelを用い、実際の臨床で得られた透析液排液中溶質濃度、患者組織血流量の経時変化にシミュレーション解析することにより患者固有の物質移動係数、水分移動係数を求めた。その値をもとに血液再循環などのイベント発生に伴う治療変動を、制御理論を用いて修復するアルゴリズムの開発に成功した。
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