研究課題/領域番号 |
24500519
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
黒岩 繁樹 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (90313212)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオイメージング / 分子間相互作用 / バイオセンサ |
研究概要 |
光アドレス電位差センサ(LAPS)は、界面に分子が吸着したときの吸着分子に由来する表面電位の変化を、光電流の変化として検出するセンシング方法である。本研究は、医学診断用の分子間相互作用イメージング装置および境界のないマルチバイオセンサとしてLAPSの応用範囲を広げることを目的として、タンパク質のパターンなどを再現性良くセンサ素子上に転写する方法を確立して、LAPSの有用性の実証を目指すものである。 研究実施計画では、当該年度は、タンパク質パターンの転写法の確立と高速なレーザーXYスキャンを行うシステムの構築を目指す予定であったが、平成25年度以降に行う予定だった、高速リアルタイムイメージング実現のための主にソフトウェア上で行う作業の方を先行させ、LAPS用高速電位掃引システムを作製した。 LAPS掃引システムの高速化を実現するために必要な、電位掃引用のファンクションジェネレータ制御ソフトウェアおよびロックインアンプ制御ソフトウェアを、ソフトウェア言語LabVIEWで作製した。通常のLAPSでは電位を掃引したときの電流変化が最大になる電位を各点でプロットしていく方式であるが、電位の掃引をファンクションジェネレータによって発生させた高周波による電位変調として行い、それに同期した微小電流応答をロックインアンプによって検出する方法を行った。このとき電流信号は微分波形で得られて、目的の応答電位を高速かつ高分解能で計測できた。 観察したいところをリアルタイムに観察しながら探索する「電気化学顕微鏡」をLAPSイメージングシステムで構築するためには、より高速に電位応答を測定しつつレーザーを掃引する必要がある。本成果によって、電位応答測定が律速にならないように高速化しつつ、より高い電位分解能を実現し、LAPSイメージングシステムとしての完成度を高めることできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の課題としては、制御ソフトウェアの開発、転写システムの構築、機械的なXY掃引装置の作製の三つが挙げられ、そのうちの制御ソフトウェアの開発がほぼ終了したといえるが、ハードウェア開発(転写システムの構築、機械的なXY掃引装置の作製)はやや遅延している。これは、ソフトウェア開発の場合はやり直しが可能であるのと異なり、限られた予算内でのハードウェアの開発を行うには、コストを安くあげるために極力やり直しを避ける必要があり、設計計画の練り直しを繰り返してきたためである。現在のところ対外的な成果という点では出ていないが、3年の研究期間の中では達成順序を変更した程度で、研究の遅れとしてはあまり深刻ではない。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定よりソフトウェア開発の方が先行しているので、ハードウェア開発を進めていく。LAPSの機械的なXY掃引システムの構築に関しては、ピエゾ電動光学マウントなどを用いてミラーを小さく振動させる手法でスキャンを行うことを計画していたが、パソコンのCDドライブなどで用いられているように、レーザー素子とレンズをスキャンさせるレーザー掃引システムを転用する方が圧倒的に予算および時間の節約になり、簡便で確実であることが分かった。タンパク質等の転写システムの構築も既存の電気泳動装置のブロッティング(タンパク質転写)装置を改造する方が予算および時間の節約になることが分かった。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究によって、LAPS高速掃引システムの電位掃引の方は完成した。そこで次年度は、タンパク質パターンの転写法の確立と、高速なレーザーXY掃引を行うシステムの構築を目指す。 自己組織化単分子膜を用いて一種類のタンパク質のアミノ酸残基の一部と共有結合によって酸化シリコン上に固定する手法を開発してきたが、複数のタンパク質から成るパターンを転写して検出用分子として用いることを考えているため、転写時の電場で自己組織化単分子膜や酸化シリコン被膜を破壊しない条件を見出す必要がある。正常に転写されれば、等電点電気泳動を用いて分離した試料を転写した場合、LAPSでタンパク質の電荷の違いとして等電点の違いが確認できるはずである。転写方法は基本的に従来の電気泳動のブロッティングシステムを利用するため、電気泳動装置一式とブロッティングシステム一式(50万円程度)と関連する試薬類を購入予定である。 LAPSの機械的なXY掃引システムは、パソコンのCDドライブで用いられているようにレーザー素子とレンズをスキャンさせる方式をそのまま利用することにした。これに関しては、測定専用のパソコン(10万円前後)、CDドライブ等、プログラム開発言語LabIEW(約20万円)等の購入を予定している。また、装置の動作確認としては、適当な素子作製用のマスクパターンを用いてレジストの微小パターンを形成したLAPS基板を作製し、LAPSイメージを測定することを計画している。 さらに次年度以降は、転写タンパク質パターンを検出用分子として利用して、相互作用プロテオミクスの実現を目指して、まずは、アレルゲン固定によるマルチアレルギーセンサのモデルを構築することを計画しており、抗原、抗体等の生体関連試薬の使用を予定している。
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