研究課題/領域番号 |
24500519
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
黒岩 繁樹 早稲田大学, ナノ理工学研究機構, 研究院准教授 (90313212)
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キーワード | バイオイメージング / 分子間相互作用 / バイオセンサ |
研究概要 |
光アドレス電位差センサ(LAPS)は、界面に分子が吸着したときの吸着分子に由来する表面電位の変化を、光電流の変化として検出するセンシング方法である。本研究は、医学診断用の分子間相互作用イメージング装置および境界のないマルチバイオセンサとしてLAPSの応用範囲を広げることを目的として、タンパク質のパターンなどを再現性良くセンサ素子上に転写する方法を確立して、LAPSの有用性の実証を目指すものである。 研究実施計画では、当該年度は、LAPS用高速リアルタイムイメージング実現のための高速電位掃引システム用のソフトウェア開発を行う作業を行う予定であったが、それは昨年度にほぼ終了している。そのため、本年度は実施計画を一部変更し、高速なレーザーXYスキャンを行うシステムのハードウェア構築を行った。当初の予定であったピエゾ電動光学マウントを用いてミラーを小さく振動させる手法でスキャンを行う方法は、予算的にかなり難しいことが確実になったので、パソコンのCDドライブに用いられているレーザー素子とレンズをスキャンさせるレーザー掃引システムを転用する方法をとり、まだ一次元方向ではあるが、安価で簡便なスキャンシステムを構築した。 また、LAPS測定に必要不可欠な界面修飾技術に関しては、電界効果型トランジスタセンサによる研究が大きく進み、抗体固定化センサ、抗原(アレルゲン)固定化センサ、低分子プローブ固定化センサ等に関する論文発表ができた。スキャンシステムのハードウェア以外は、平成26年度分に予定されていたイメージングの基本技術はほぼ得られたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の課題としては、制御ソフトウェアの開発、転写システムの構築、機械的なXY掃引装置の作製の三つが挙げられ、そのうちの制御ソフトウェアの開発がほぼ終了したといえるが、ハードウェア開発(機械的なXY掃引装置の作製)は、やや遅延している。これは、ソフトウェア開発の場合はやり直しが可能であるのと異なり、限られた予算内でのハードウェアの開発を行うために、設計のやり直しを避けて、設計計画段階での大きな練り直しをいくつか行ってきたためである。しかしながら、現在低予算化の目途が立ち測定装置を作成中である。また、逆に転写システムの構築に不可欠なセンサ界面修飾技術に関しては、平成26年度分を先取りして対外的な成果が出ているため、全体としての研究の遅れとしては、あまり深刻ではない。
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今後の研究の推進方策 |
ソフトウェアおよび界面修飾技術は先行しているので、昨年度に引き続き、ハードウェア開発を進めていく。LAPSの機械的なXY掃引システムの構築に関しては、パソコンのCDドライブに用いられている、レーザー素子とレンズ自体をスキャンさせるレーザー掃引システムを転用した。今後はステッピングモーターを位置決め用に制御するためのソフトウェアも含めた調整、焦点距離の調整、LAPSデバイス実機のための電極セル作成などを行ってシステムの完成を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度までの研究によって、LAPS高速掃引システムの電位掃引のためのソフトウェア開発、界面修飾技術、およびレーザーXY掃引を行うシステムの一部は完成した。そこで次年度は、引き続きハードウェア開発を進めていく。主に、電気泳動結果のタンパク質パターンのLAPSへの転写法の確立とXY掃引システムの完成のための予算が必要である。 LAPSのXY掃引システムは、既にパソコンのCDドライブのシステムを利用しているが、掃引用のフレームの設計とLAPS電極セルの外注が必要となる予定である。設計のためのCADソフト(20万円程度)を購入予定である。制御用のプログラム開発言語LabVIEWのアップデート費用として10万円を予定している。また、装置の動作確認としては、適当なマスクパターンを用いてレジストの微小パターンを形成したLAPS基板を作製して、イメージを測定することを計画している。 転写方法は従来の電気泳動のブロッティングシステムを利用するため、電気泳動装置一式とブロッティングシステム一式のうち、本年度での購入が間に合わなかったものと関連する試薬類を購入予定である。転写タンパク質パターンを検出用分子として利用した、相互作用プロテオミクスの実現を目指して、抗原、抗体等の生体関連試薬の使用を予定している。
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