研究課題/領域番号 |
24500520
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 浜松大学 |
研究代表者 |
磯貝 香 浜松大学, 保健医療学部, 教授 (00549496)
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研究分担者 |
山田 陽滋 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90166744)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 筋筋膜性疼痛 / 徒手的理学療法 / 筋硬結 / 触診 / 触察分布力ベクトル |
研究概要 |
本研究では、触診技術の発展を目的に、検査者が筋内に存在する異常部位(筋硬結)を触診するときの皮膚に加えられる分布力ベクトルを検出し、その検出結果をリアルタイムに可視化するシステム(触診技術向上支援システム)の構築を目指している。このシステムは、筋硬結を内包する皮膚・皮下組織・筋を人工的に再現した構造物(筋硬結ダミー)、分布力ベクトルを検出するセンサ、検出結果を映し出すディスプレイの3部をもって実現させる計画である。そこで、当該年度においては筋硬結ダミーの本体となるシリコーン成形物の作製に必要な機器を配備した。現在、各種シリコーンをいろいろな割合で配合し、硬さの異なるシリコーン成形物を作製している。 筋硬結ダミーにはヒトの皮膚・皮下組織・筋と同様な物理特性を持たせる必要がある。そこで、これら3組織のそれぞれの物理特性データを取得するための準備を行ってきた。これは、既に研究実施施設に配備されている超音波断層撮影装置と引張圧縮試験機を組み合わせて行う予定である。両者をつなぎ合わせるアタッチメントは既に作製済みであり、装置と被験者とのセッティングが整い次第データ取得実験を行う計画である。一方、筋硬結ダミーに内包させる人工筋硬結についても実際の筋硬結と同様の物理特性を持たせる必要があるが、筋硬結の硬さはおろか形や大きささえもこれを報告する先行研究は見あたらない。そこで、徒手的理学療法に従事する、理学療法士、作業療法士、柔道整復師、鍼師等を対象に、標準的な筋硬結の形や性状に関するアンケート調査を行ってきた。数回に分けて行ってきたアンケート調査はほぼ終了し、現在アンケート結果の解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
筋硬結ダミーの本体となるシリコーン成形物は触察分布力ベクトルを検出するセンサの役割も兼ねている。このセンサは透明であることが必要であるが、試作したシリコーン成形物はこの透明度に問題を残している。そこで、他メーカーのシリコーン及びシリコーン以外の素材の使用も考慮に加え、筋硬結ダミーのベース選択を続けている。 筋硬結ダミーに与える物理特性について、生体情報や人工皮膚等に関する先行研究を参考にする予定であったが、皮膚・皮下組織・筋の3層構造を実現するだけの十分な物理特性データは存在せず、自ら計測する必要が出てきた。また、計測機器の特性上、機器設置の自由度に乏しく、機器と被験者とのセッティングに工夫が必要な状態である。 標準的な筋硬結の形や性状に関するアンケート調査を進めてきたが、回答内容が不明瞭であったり信憑性に欠ける回答が含まれていたりして、アンケート用紙の修正及び調査のやり直しを余儀なくされてきた。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトの皮膚・皮下組織・筋の物理特性の計測結果と標準的な筋硬結の形や性状に関するアンケートの結果を参考にして、数種の筋硬結ダミーを試作する。続いて、試作した筋硬結ダミーを、日常的に徒手的理学療法に従事している者に触察させ、最も人体に類似しているものを選択させる心理物理学実験を行うとともに、意見聴取を行うことで、より人体に近い筋硬結ダミーへと改良していく。十分に満足のいく筋硬結ダミーが完成した後、これにビーズを埋め込んだ触察分布力ベクトルセンサの製作に入る。同時に、これをCCDカメラで撮影し、その結果を解析するプログラムを開発し、その結果をリアルタイムにディスプレイに映し出すシステム(触診技術向上支援システム)を構築する。 続いて、徒手的理学療法の熟練者を被験者として募り、触診技術向上支援システムを用いて熟練者同士が触察感を共有する練習を行い、触察感共有後の上達度の定量評価を行う。そして、上達後の触察分布力ベクトルデータを熟練者のデータとして保存する。続いて、徒手的理学療法の非熟練者を被験者として募り、その触察分布力ベクトルデータを収集保存し、これを非熟練者の触察分布力ベクトルデータとして保存する。このデータベースから両者の違いを統計学的に分析できるようにする。そして、評価結果をもとにして、熟練者が非熟練者を指導することによって、非熟練者の触診技術が向上するかどうかを調べる介入実験を行う。また、同評価結果をもとに非熟練者が単独で練習することで、触診技術が向上するかどうかを確認する。これにより、触診技術教育の自動化が可能となるかどうかを検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
筋硬結ダミーの原料となるシリコーン等の購入費用として約10万円、触察分布力ベクトルセンサのカメラ画像処理用コンピュータ(液晶ディスプレイ込み、メモリ16GB、グラフィックスボード:NVIDIA GeForce GTX560 2GB)の購入費用として約12万円、触察分布力ベクトルセンサ用カメラ( IEEE1394カメラ)の購入費用として約45万円、ソフトウェア開発環境として約1万円(Microsoft製、Visual Studio 2010 Professional アカデミック)を使用する計画である。また、筋硬結ダミーの作成及び触察分布力ベクトルデータの取得に参加する被験者の謝金として約10万円(延べ25人×4時間)、成果発表の旅費として約3万円(日本理学療法学術大会、愛知2日×2人)、研究成果投稿料として約4万円(日本機械学会誌)を使用する計画である。よって、次年度使用額は約85万円を計画している。
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